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4月中旬まで更新は中断します



倫理模試の過去問をやってみよう(125)



2018年1月実施の倫政センター試験の解説

<政経 第二問 問3>
問 社会保障制度に関連する記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一 つ選べ。
@ ILO(国際労働機関)は、フィラデルフィア宣言で、社会保障の範囲の拡大に貢 献した。
A 個人が就労している時期に納めた保険料によって、自らの年金受給を賄う方法を 賦課方式という。
B 日本の社会保障費の中で最も大きな割合を占めている項目は、生活保護費である。
C ドイツの宰相ビスマルクは、「ゆりかごから墓場まで」をスローガンに、社会保険 制度を整備した。




正解は@である。

現代社会の諸問題における労働問題・社会保障問題はよく出題される分野である。しっかりと学習しておこう。
 @ 正しい。
 A これは積み立て方式の説明である。賦課方式とは、現在の納付金をそのまま給付にまわすあり方である。
 B 日本の社会保障費の中で最も大きな割合を占めている項目は、医療・年金を中心とした社会保険である。
 C 「ゆりかごから墓場まで」をスローガンにしたのは、ベバリッジ報告である。(1/12)



 

倫理模試の過去問をやってみよう(124)



今回も、2018年1月実施の倫政センター試験の解説

<倫理 第二問 問2>
問 仏教の修行法である八正道についての説明として最も適当なものを、次の@〜C のうちから一つ選べ。
@ 快楽と苦行を避け、中道に生きるための修行法が八正道であり、その一つである 正業とは、悪しき行為を避け、正しく行為することを指す。
A 快楽と苦行を避け、中道に生きるための修行法が八正道であり、その一つである 正業とは、人の行為と輪廻の関係を正しく認識することを指す。
B 六波羅蜜の教えに由来する修行法が八正道であり、その一つである正業とは、悪 しき行為を避け、正しく行為することを指す。
C 六波羅蜜の教えに由来する修行法が八正道であり、その一つである正業とは、人 の行為と輪廻の関係を正しく認識することを指す。




正解は@である。

 源流思想は頻出の分野である。仏教思想については、四諦説はブッダが初転法輪で 説いたものであり、その中心となるものであるからしっかりと学習しておこう。
@について、これは正しい。
Aについて、正業とは日常生活における正しい行いを指しているので間違い。
Bについて、六波羅蜜はブッダ入滅後に隆盛した大乗仏教の修行法であるので、四 諦説の道諦の中で説かれる八正道とは直接関わりがないので間違い。
Cについて、六波羅蜜はブッダ入滅後に隆盛した大乗仏教の修行法であるので、四 諦説の道諦の中で説かれる八正道とは直接関わりがないので間違い。(1/4)




倫理模試の過去問をやってみよう(123)



2018年1月実施の倫政センター試験の解説

<政経 第二問 問2>
問 国家間格差に関する記述として最も適当なものを、次 の@〜Cのうちから一つ選 べ。 @ 国連総会において、先進国の資源ナショナリズムの主張を盛り込んだ新国際経済秩序樹立宣言が採択された。
A 国連貿易開発会議は、南南問題の解決を主目的として設立された。
B 日本の政府開発援助は、必ず返済しなければならない。
C 現地生産者や労働者の生活改善や自立を目的に、発展途上国の原料や製品 を適切な価格で購入するフェアトレードが提唱されている。




正解はCである。

グローバル化の是非が社会的論議となっている時代である。国際経済・国際政治 に関する設問も増えているので、この分野がおろそかにならないようにしておこう。
 @ 資源ナショナリズムとは、先進国が主張したものではなく、自国資源の権益の多くが先進国により握られている発展途上国がその権益を取り戻すために主張したものであるので間違い。
 A 南南問題の解決ではなく、南北問題の解決を目的として設立されたので、間違いである。
 B 政府開発援助には、返却が義務付けられる借款と返還の必要のない贈与があるので間違い。
 C 正しい。(12/29)



倫理模試の過去問をやってみよう(122)



2018年1月実施の倫政センター試験の解説

<倫理 第二問 問1>
問1 日本の神話や伝承で示される神についての説明として最も適当なものを、次の @〜Cのうちから一つ選べ。
@ 元来、神は特定の形をもつものではなく、人間に畏怖の念を抱かせるものや、人 知を超えた不可思議な現象が神のあらわれとされた。
A 神は善事を行うだけでなく狼藉を働くこともあったが、神の狼藉は造物主として のアマテラスによって裁かれると考えられた。
B 洪水や飢饉、疫病の流行といった災厄は神の祟りであり、祟りをなす神に対して はいかなる祭祀を行っても効果がないとされた。
C 神は人間の住む世界からは隔絶した他界に存在し、自然の秩序や人々の生活に関 与することはないと考えられた。




正解は@である。

 日本の古代の神観念の特徴はいくつかあげられる。まず第一に多神教であること。 さまざまな事物に霊魂が宿るとするアニミズム信仰であること。また神々は高天原に 住み、そこの主宰者・他の神をもてなすのがアマテラスであること。また人々の前に 神が姿を現すことを祟りという。現在では厄災をもたらすことを指す言葉になったが、 それを沈めるために祭祀が生まれたとされることなどである。
@について、これは正しい。
Aについて、アマテラスは造物主ではないので間違いである。
Bについて、神の祟りや神による厄災を沈めるための起源が祭祀であるので間違い である。
Cについて、神々は人間に対して祟りをもたらしたり、豊穣や安穏をもたらしたり するものとされているので間違い。(12/24)



倫理模試の過去問をやってみよう(121)



2018年1月実施の倫政センター試験の解説

<政経 第一問 問7>
問7 電力に関しての記述として誤っているものを、次の〜Cのうちから一つ選べ。
@ スマートグリッドは、情報通信技術を使って需要側と供給側の双方から電力をき め細かく制御する機能をもつ電力網である。
A 日本では、運転差止めを命じる裁判所の仮処分決定に基づいて、原子力発電所で 運転中の原子炉が停止したことがある。
B 日本では、一般家庭への電力の小売は自由化されていないが、工場など大口消費 者については自由化されている。
C 風力発電は、風を利用して発電するため発電量が気象条件に左右されるというデ メリットがある。




正解はBである。

 時事に関わる問題は、しばしば出題されることがあるので準備が必要である。1年以内のことよりも数年前のことが出題されるので、新聞やテレビのニュースに気を配りながら、大事だと思われることがあればさかのぼって調べておこう。東日本大震災以来原子力発電や自然エネルギーや電力などに関する事項はひじょうに国民の関心の高い項目となっていた。それを勘案すると、それらに関する問題は、出題される可能性が高いということは十分予測できたことである。
 @ 夏場の電力不足による計画停電を避けるため、電力の需要状況をタイムリーに知ることができるスマートグリッドは、一部の学校などにも設置された。これは正しい。  A 裁判所が原子力発電の運転差し止めの仮処分を出したことは、新聞で話題となったニュースである。そのような判決が出た以上、上級審でそれがくつがえされない限りその処分には従う義務があるので、これは正しい。  B 電力を買う会社を中国電力から違う会社に替えるなどの勧誘があったのではないか。また中国電力は新しい料金プランの提示やポイント制度などをうちだしたのではないか。それらのことに関心を持ち、知っていれば誤りだと分かるはずだ。  C 常識的に考えて全く正しい。(/)



倫理模試の過去問をやってみよう(120)



今回も、2018年1月実施の倫政センター試験の解説を始めます。

<倫理 第一問 問5>
問 センによる福祉の捉え方の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから 一つ選べ。
@ 個人の才能としての「潜在能力」を最大限に引き出し、各人が自分の能力を社 会で発揮できるようにすることによって、財や所得の豊かさという福祉の目標を実現 しなければならない。
A 生き方の幅としての「潜在能力」を改善し、各人が自分の達成できる状態・活 動をより自由に実現できるようにすることで、財や所得の豊かさという福祉の目標を実現しなければならない。
B 個人の才能としての「潜在能力」を最大限に引き出し、各人が自分の能力を社 会で発揮できるようにすることが福祉の目標であり、財はこの目的のために分配されなければならない。
C 生き方の幅としての「潜在能力」を改善し、各人が自分の達成できる状態・活 動をより自由に実現できるようにすることが福祉の目標であり、財はこの目的のため に分配されなければならない。




正解はCである。

 彼は、個人の福祉とは達成された機能ではない。達成するためにどれだけの自由な 幅を持っているかということであると述べた。つまり、潜在能力を単に幸福を手にす るための手段と考えたのではなく、幸福とは自分のさまざまな機能の中から自由に選 ぶことができること、その選択肢が豊富にあることそれ自体にあるとしたのである。
@ 「潜在能力」を個人の才能としてとらえること、財や所得の豊かさを福祉の目標 ととらえることは間違いである。
A 生き方の幅としての「潜在能力」というとらえ方は正しいが、財や所得の豊かさ という福祉の目標という主張は間違いである。
B 「潜在能力」を個人の才能としてとらえることは間違いである。 C 正しい。(12/14)



倫理模試の過去問をやってみよう(119)



2018年1月実施の倫政センター試験の解説

<政経 第一問 問4>

問4 「法の支配」の説明として正しいものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@ 法は、それに違反した場合に、刑罰など国家権力による制裁を伴う点に特徴が あるとする考え方である。
A 法は、主権者である国王や権力者が出す命令であって、国民はこれに従わなけ ればならないとする考え方である。
B 議会の制定した法に基づいて行政が行われなければならないという、形式面を 重視する考え方である。
C 個人の権利を守るため、国王や権力者といえども法に従わなければならないと する考え方である。




正解はCである。

 「法の支配」と「法治主義」の違いは、センター試験ばかりでなく、一般入試の政治経済の分野における頻出問題でもある。「法の支配」とはイギリスで発達した概念で、すべての国家活動が憲法や法律を基準に営まれることであり、この時の法とは自然法にかなった、民主的手続きにおいて制定されたものでなければならない。一方、「法治主義」とは、ドイツで発達した概念で為政者が法の拘束を受けることに変わりはないが、あくまでその法の中身よりも形式や手続きを重視するものである。
@について、「法の支配」とは刑罰などの制裁について規定したものではない。
Aについて、「主権者である国王や権力者が出す命令」を法として認めるのは、「法の支配」ではなく「法治主義」の立場である。
Bについて、形式面を重視するのは、「法治主義」の考え方である。
Cについて、これは正しい。(12/8)



倫理模試の過去問をやってみよう(118)



2018年1月実施の倫政センター試験の解説

<倫理 第一問 問3>
問 次のア・イは、マズローが考えた欲求の理論についての説明である。その正誤の 組合せとして正しいものを、下の@〜Cのうちから一つ選べ。

ア 他者と関わり親密な関係を築きたいという、愛情と所属の欲求が満たされると、 承認(自尊)の欲求が生じるようになる。
イ 生理的欲求、安全の欲求などの欠乏欲求が満たされると、自己実現の欲求という、 より高次の欲求が生じるようになる。

@ ア 正    イ 正         A ア 正    イ 誤
B ア 誤    イ 正         C ア 誤    イ 誤




 正解は@である。

 青年期の課題の中で頻出分野の一つに、このマズローの欲求階層説がある。彼は人 間の欲求を五段階に分類し、それらは階層をなしているとした。第一層に生理的欲求 があり、これが満たされると第二層の安全を求める欲求が生じ、これがかなえば愛情 と所属の欲求、さらに自尊の欲求へとすすんでいく。
 そして、第一層から第四層までを欠乏欲求といい、これら下位の欲求が満たされる と、第五層の自己実現の欲求という成長欲求が生じると主張する。
 アについて、これは正しいとすぐ判断できる。
 イについて、これも正しいと判断できる。(11/30)


倫理模試の過去問をやってみよう(117)



2018年1月実施の倫政センター試験の解説

<政経 第一問 問3>
問3 下線部イに関連して、アメリカとイギリスの政治制度について述べた次の文章中 の空欄( ア )〜( ウ )に当てはまる語句の組合せとして正しいものを、下の @〜Gのうちか一つ選べ。

アメリカでは、大統領は連邦議会の議員の選挙とは別に公選され、議会に議席をも たない。大統領は、議会が可決した法案に対する拒否権と議会への( ア )権とをもつが、議会の解散権をもたない。また議会は、大統領に対して( イ )を行う権限をもたない。
これに対しイギリスでは、下院(庶民院)の多数派から首相が任命されて内閣を組 織する。内閣は法案を提出することができ、通常は与党議員である大臣が議会で説明や答弁を行う。また伝統的に、下院は内閣に対する( イ )権をもち、これに対抗して内閣は下院を解散することができるとされてきた。
こうしてみると、アメリカでは、イギリスよりも立法府と行政府との間の権力分立 が( ウ )である。

@ ア.教書送付   イ.弾劾   ウ.厳格
A ア.教書送付   イ.弾劾   ウ.緩やか
B ア.教書送付   イ.不信任決議   ウ.厳格
C ア.教書送付   イ.不信任決議   ウ.緩やか
D ア.法案提出   イ.弾劾   ウ.厳格
E ア.法案提出   イ.弾劾   ウ.緩やか
F ア.法案提出   イ.不信任決議   ウ.厳格
G ア.法案提出   イ.不信任決議   ウ.緩やか




正解はBである。

 主要国の政治制度についてのごく基本的な簡単な問題である。すべてが教科書の本文に書かれていることである。( ア )については、米の大統領は、法案提出権がない代わりに教書による法案化の勧告ができるとされているので、教書送付であるのはすぐ分かる。
( イ )については、米の議会に大統領の不信任権はない(弾劾権はある)が、イギリスの下院には内閣不信任権はあることから、不信任決議であることはすぐに判断できる。
また、( ウ )については、大統領制は議院内閣制に比べて権力分立を徹底した制度であることは、この制度の基本的な特徴であり、そのことから厳格が導き出せる。(11/24)



倫理模試の過去問をやってみよう(116)



2018年1月実施の倫政センター試験の解説

<倫理 第一問 問2>

問 次のア〜ウは、苦しむ人々を救うことに尽力した人物の説明であるが、それぞれ 誰のものか。その組合せとして正しいものを、下の@〜Gのうちから一つ選べ。

ア 人道主義的立場から、労働者の劣悪な生活環境を改善することを目指して、協同組合の設立や理想的な共同体の建設を試みた。
イ インドを中心に、貧しい人々や孤児などの社会的弱者の救済活動に生涯をささげ、見捨てられた病人のために「死を待つ人の家」を設立した。
ウ 人種差別に抵抗して、非暴力の思想に基づく運動を展開し、黒人が公民権を得て白人と平等に暮らせる社会を求めた。

@ ア エンゲルス   イ ガンディー    ウ キング牧師
A ア エンゲルス   イ ガンディー    ウ ラッセル
B ア エンゲルス   イ マザー・テレサ  ウ キング牧師
C ア エンゲルス   イ マザー・テレサ  ウ ラッセル
D ア オーウェン   イ ガンディー    ウ キング牧師
E ア オーウェン   イ ガンディー    ウ ラッセル
F  ア オーウェン   イ マザー・テレサ   ウ キング牧師
G ア オーウェン   イ マザー・テレサ  ウ ラッセル




正解はFである。

教科書程度の知識で十分正解は導ける。アは、「労働者の劣悪な生活環境を改善することを目指して、協同組合の設立や理想的な共同体の建設を試みた」というところから、『共産党宣言』の作成や『資本論』の刊行に尽力したエンゲルスではなく、空想的社会主義者のオーウェンについての説明であることが判断できるはずだ。教科書には記述はないが、オーウェンはニューラナーク工場長の時に協同組合を設立したりして労働者の環境改善をはかったり、失敗はしたけれどもアメリカにニューハーモニー村という理想都市を建設したことは用語集などに記述がある。
  イについて、「見捨てられた病人のために「死を待つ人の家」を設立」ということは 教科書の本文に明記されており、マザー・テレサであることが分かる。
 ウについて、「黒人が公民権を得て白人と平等に暮らせる社会を求めた」は教科書に写真と添付文書で明記されており、キング牧師であることがすぐ分かる。(11/18)



倫理模試の過去問をやってみよう(115)



2018年1月実施の倫政センター試験の解説

<政経 第一問 問2>
問 日本国憲法が保障する基本的人権は、さまざまな観点から分類することができる。 一つの分類のあり方について述べた次の文章中の空欄( ア )〜( ウ )に当ては まる語句の組合せとして最も適当なものを、下の@〜Eのうちから一つ選べ。

日本国憲法が保障する基本的人権には、さまざまなものがある。その中には、表 現の自由や( ア )のように、人の活動に対する国家の干渉を排除する権利である自由権がある。また、( イ )や教育を受ける権利のように、人間に値する生活をすべての人に保障するための積極的な施策を国家に対して要求する権利である社会権がある。さらに、これらの基本的人権を現実のものとして確保するための権利として、裁判を受ける権利や( ウ )をあげることができる。

@ ア 生存権   イ 財産権   ウ 国家賠償請求権
A ア 生存権   イ 国家賠償請求権   ウ 財産権
B ア 財産権   イ 生存権   ウ 国家賠償請求権
C ア 財産権   イ 国家賠償請求権   ウ 生存権
D ア 国家賠償請求権   イ 生存権   ウ 財産権
E ア 国家賠償請求権   イ 財産権   ウ 生存権




正解はBである。

 基本的人権の分類について問う基礎的な問題である。基本的人権は平等権・自由権・社会権・人権を実現するための権利・新しい人権などに分けられる。そして自由権はさらに精神・身体・経済の自由に分類される。また社会権には、生存権・教育権・勤労権が含まれる。また、人権を実現するための権利には、裁判を受ける、国家に損害賠償を請求する権利、刑事補償請求権などがある。これらが頭に入っていれば簡単に正解を導けるはずだ。
 ただ、これらのことが全部分かっていなければならないわけではない。まず、社会権は生存権・教育権・勤労権ぐらいしか種類がなく、「人間に値する生活をすべての人に保障する」という記述からイは生存権であることが分かる。自由権はその範囲も広く多くのものが含まれるが、財産権と国家賠償請求権を比べれば、経済の自由に関わる財産権であることは一目瞭然で、アは財産権となる。ゆえに正解はBであることが簡単に導けるはずだ。(11/10)


倫理模試の過去問をやってみよう(114)



今回より、2018年1月実施の倫政センター試験の解説を始めます。

<倫理 第一問 問1>
青年が自己形成していく過程についての説明として適当でないものを、次の@〜Cの うちから一つ選べ。
@ ハヴィガーストによれば、親との情緒的なつながりを深めつつ、親の価値 観を内面化することが、青年期の課題(発達課題)に含まれる。
A ハヴィガーストによれば、職業決定や経済的独立の準備を進め、他者と洗 練された人間関係を結ぶことが、青年期の課題(発達課題)に含まれる。
B オルポートは、自分以外の人間や事物に対する関心を広げ、現実や自己を 客観的にみることを、成熟した人格になるための条件(基準)とした。
C オルポートは、自分独自の人生哲学を獲得し、ユーモアの感覚をもつこと を、成熟した人格になるための条件(基準)とした。




正解は@である。

 ハヴィガーストの発達課題の項目、またオルポートの成熟した人格になるための条件(基準)の具体的内容は、教科書には記載されていない。用語集にはすべての項目が書かれている。それなら用語集を覚えておかなければできない問題かというと決してそうではない。もちろん、用語集を読んでおくことは必要なことであるが、青年期がかかえる課題をその場で考えてみれば十分正解は導けるはずだ。
 @にある「親との情緒的なつながりを深めつつ、親の価値観を内面化すること」な どはあきらかに青年期以前の課題であることが分かる。その時点で@が適当でないと して選択されるはずだ。そしてAの「職業決定や経済的独立の準備を進め、他者と洗 練された人間関係を結ぶ」やBの「自分以外の人間や事物に対する関心を広げ、現実 や自己を客観的にみること」やCの「自分独自の人生哲学を獲得し、ユーモアの感覚 をもつこと」は青年期の課題であるとしても何らおかしくない。それらから総合的に 判断して、@が選ばれるはずだ。(11/2)


倫理模試の過去問をやってみよう(113)



(今回も「現代社会の諸問題」についての問題にトライします)

問 戦争や、それに対する責任についての思想の例として次のア〜エがある。各々を説いた思想家や宣言の組合せとして最も適当なものを、下の@〜Cのうちから一つ選べ。

ア 戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。
イ 過去に目を閉ざす者は、けっきょく現在にも目を開かなくなる。
ウ 孤立して無力感に囚(とら)われた大衆が、帰属感を求めて人種主義に吸収され、全体主義が発生する。
エ 汝(なんじ)殺すなかれと呼びかける他者の苦痛に責任をもつとき、人間は倫理的主体となる。

@ ア レヴィナス      イ ユネスコ憲章      ウ ヴァイツゼッカー     エ ハンナ=アーレント
A ア ハンナ=アーレント  イ レヴィナス       ウ ユネスコ憲章       エ ヴァイツゼッカー
B ア ヴァイツゼッカー   イ ハンナ=アーレント   ウ レヴィナス        エ ユネスコ憲章
C ア ユネスコ憲章     イ ヴァイツゼッカー    ウ ハンナ=アーレント    エ レヴィナス
(2007年センター試験)





正解はCである。

 仮にすべての選択肢が各々誰のものか分からなくても、4つの組み合わせから選ぶので十分正解を導けるはずである。
 アは有名なユネスコ憲章の冒頭であり、政経分野においてはよく問われてきたものである。また、イはドイツの大統領のヴァイツゼッカーの有名な言葉であり、 教科書の最初の所に記載がある。ハンナ=アーレントは全体主義の研究を行った。また、レヴィナスは他人を他性として自己の意識に取り込めないものとした。(10/26)



倫理模試の過去問をやってみよう(112)



(今回も「現代社会の諸問題」についての問題にトライします)

問 個人の置かれた境遇により、格差が生じているという現実に関連して、1994年に公表された国連開発計画の『人間開発報告書』で一般に知られるようになった「人間の安全保障」という言葉は、 「人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を包括的にとらえ、これらに対する取組を強化するという考え方」と定義される。センが挙げるその取組の具体的な例として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 世界経済のグローバル化に伴い、世界の労働者を流動化させることにより、景気後退に左右されない安定した雇用を多国籍企業の間に確保すること
A 基礎教育の普及により市民の識字率を高め、各人が主体的に選択できる生き方の幅を広げることで、より自由に社会生活に参加できるようにすること
B 一国の軍備の増強や他国との軍事同盟によるのではなく、国際社会の多数の国々が共同して相互に国家の安全を保障すること
C 発展途上国において、食糧不足により多くの人命が失われている現状に鑑(かんが)み、遺伝子組み換え食物の生産・流通を促進し、経済成長率を高めること
(2010年センター試験)





正解はAである。

「人間の安全保障」とは、紛争・災害や感染症など人間の生存を脅かす直接的な脅威に対し、国家という枠組みを超えて、個々の人間に着目して安全を保障しようとするものである。日本政府もこれを外交政策上の柱と位置付けている。

@について、「人間の安全保障」とは全く関わり合いのないことなので明らかな間違い。
Aについて、これはセンの主張するケイパビリティー(潜在能力)の確保のことであり、正しい。
Bについて、これは勢力均衡から集団安全保障へと移行した国際連合の「国家の安全保障」のことであるので間違い。
Cについて、「人間の安全保障」とは単なる経済援助による経済成長を促進させることとは異なるのでこれは間違い。(10/20)



倫理模試の過去問をやってみよう(111)



(今回も「現代社会の諸問題」についての問題にトライします)

問 異文化理解についての記述として適当でないものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 古代ギリシア人たちが異民族を「バルバロイ」と呼んで蔑(さげす)んだように、人は往々にして、自民族や自文化の価値観を絶対のものとみなした上で他の民族や文化について判断を下そうとする、エスノセントリズムに陥りがちである。
A どの文化もそれぞれに固有の価値を備えており、互いの間に優劣の差をつけることはできない、とする文化相対主義は、人が文化の多様性を認め、寛容の精神に基づく異文化の理解へと歩を進める上で、一定の役割を果たしうる。
B パレスチナ生まれの思想家サイードは、近代において西洋の文化が自らを東洋と区別し、東洋を非合理的で後進的とみなすことで西洋自身のアイデンティティを形成した過程を指摘し、その思考様式をオリエンタリズムと呼んだ。
C 一つの国家や社会の中で異なる複数の文化が互いに関わり合うことなく共存できるよう、その障害となる諸要素を社会政策によって除去する必要がある、と考える多文化主義の立場は、それ以前の同化主義への反省から生まれた。
(2006年センター試験)





正解はCである。

 現代はヒトやモノや情報が国境を越えて大量に行き交うグローバリゼーションの時代にあって、異なる文化や宗教が接触する多文化の時代にあると言える。このような中でエスノセントリズムというものの見方・同化主義から文化相対主義つまりマルチカルチャリズムへと考え方を広げていく必要がある。このことに関連しては、レヴィ・ストロースの構造主義やサイードの言うオリエンタリズムの理解が欠かせない。

@ エスノセントリズムとは自民族中心主義である。このことを正しく表現しているのでこれは正しい。
A 正しい。レヴィ・ストロースの構造主義はこのような考え方である。
B 正しい。サイードによるオリエンタリズムはしっかり頭に入れておこう。
C 「一つの国家や社会の中で異なる複数の文化が互いに関わり合うことなく」という記述が間違い。互いに関わり合い、理解し合い共存することが多文化主義である。(9/14)



倫理模試の過去問をやってみよう(110)



(今回も「現代社会の諸問題」についての問題にトライします)

問 ネットにアクセスできない人もいるという問題を示す用語として正しいものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ バーチャル・リアリティ
A ユビキタス
B デジタル・デバイド
C サブリミナル効果
(2013年 センター試験)




Bが正解である

 情報化社会と言われて久しいが、それが進展するにしたがって新たないろいろな問題が生じている。「忘れられる権利」なども主張されている。新聞などの報道にも目を配り、広い視点で動きをつかんでおく必要がある。

 @について、仮想現実と訳される。実在しない仮想世界を人工的に構築し、その空間を疑似体験させることであり、これは正しくない。
 Aについて、いつでも、どこでも、何にでも、誰でも、情報ネットワークにアクセスできることであり、これは間違い。
 Bについて、情報格差と訳され、情報通信技術を活用できる人とできない人の間に大きな格差が生じること。これが正しい。
 Cについて、本人の知らない間に埋め込まれた情報により、ある行動が誘発されること。かつてハンバーガーの宣伝などに用いられたことがあるとされている。これは直接関係がないので間違い。 (10/8)



倫理模試の過去問をやってみよう(109)



(今回は「現代社会の諸問題」についての問題にトライします)

問 現代日本の地域社会の状況に関する記述として適当でないもの、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 核家族化によって親族間の相互扶助機能が低下しており、家庭内部で解決できない問題について、より広い助け合いの必要性が高まっている。
A 高齢化が進むとともに、高齢者が高齢者を介護する老老介護の問題が深刻化し、地域社会で介護を支援する必要性が高まっている。
B 男女の性別役割分業が見直されるようになり、家事や育児を男女間で分担することや、保育所などの社会サービスの充実が求められている。
C 夫婦間、親子間における暴力が注目されるなか、家族の問題は家族で解決できるように、公的機関による干渉の自制が求められている。
(2012年 センター試験より)





正解はCです。

現代社会の諸問題については、おさえておく必要がある。家族・地域社会やコミュニティーについて、また少子高齢化問題、女性の社会進出なども学習しておこう。
@について、これは正しい。
Aについて、これは正しい。
Bについて、これは正しい。
Cについて、家族の問題についても必要があれば公的機関が積極的に関わっていくというのが現代社会のあり方である。(10/5)



倫理模試の過去問をやってみよう(108)



(今回は「現代社会の諸問題」についての問題にトライします)

問 移動や生活の妨げとなる障壁を取り除くことはバリアフリー化と呼ばれている。それをさらに進め、障害の有無、年齢、性別にかかわらず、すべての人が同じ市民として生きていけるように環境を整備して、すべての人の共生を目指す取組がある。そうした取組を表す語句として正しいものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ ユビキタス
A アファーマティブ・アクション
B ボーダレス化
C ノーマライゼーション
(2012年センター試験)




Cが正解である。

 @〜Cの用語はどれも重要なものである。しっかりと頭に入れておこう。

 @について、ユビキタス社会とははいつでもどこにおいてもたえず情報に触れあえ、必要な情報を入手できる社会のことであるので間違い。
 Aについて、アファーマティブ・アクションとは社会的に不利な状況にあるマイノリティーを特別枠などを設けることにより、優遇していく制度のことであるので間違い。
 Bについて、ボーダレス化とは世界の境界が低くなり、人・物・情報が国境を越えて移動することを指すので間違い。
 Cについて、ノーマライゼーションとは、身体に障害がある人や高齢者などもともに共生できる社会を目指すというあり方であるので正しい。(9/28)



倫理模試の過去問をやってみよう(107)



(今回は「環境倫理」についての問題にトライします)

問 環境問題に取り組むうえで重要な考え方として「循環型社会」がある。この社会の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。 

@ 環境に大きな影響を及ぼす事業について、事前に調査し評価することを積極的に推し進めていく社会
A 資源の有効利用を目指し、資源の消費を抑制し、環境への負荷をできる限り低減しようとする社会
B 将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発を進めていく社会
C 地球規模の視野をもつだけでなく、自分にできる身近な活動から環境保護を始めていこうとする社会
(2012年 センター試験)




   正解はAです。

  「循環型社会」とは、有限である資源を効率的に利用するとともに再生産を行って、持続可能な形で循環させながら利用していく社会のことである。
@について、これは環境アセスメント(事前影響評価)のことであり、「循環型社会」とは直接関わりがないから間違い。
Aについて、正しい。
Bについて、これは「世代間倫理」にもとづいた「持続可能な開発」をめざしたものであり、間違い。
Cについて、これは「think globally、act locally」のことであるので間違い。(9/22)



倫理模試の過去問をやってみよう(106)



(今回は「環境倫理」についての問題にトライします)

問 自然との共生を唱えたレイチェル・カーソンについての記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 地球を宇宙船のように閉ざされた環境にたとえ、人間によるその汚染と破壊は地球全体の生命体にとって致命的であり、地球上のすべての人間が、同じ宇宙船の乗組員という意識で自然環境の保全に取り組むべきだと主張した。
A 有限な天然資源をめぐって各人が自由に個人的利益を追求し続けると、やがては全員の最大損失という悲劇的結果を招くことを共有地の例をもって示し、環境問題における共生の視点の重要性を訴えた。
B 現代文明の危機の原因は、機械文明に生きる人間の自然に対する独善的で傲慢な生命軽視の態度にあるとして、人間が他の生命に対して罪責を負っているという自覚を絶えずもつべきだと主張した。
C 農薬など有害な化学物質の大量使用が、生態系の破壊へとつながり、やがては人間を含む全生物の死滅へと至ることに警鐘を鳴らし、人間が自然の不思議と神秘に驚嘆する感性を取り戻すことの必要性を訴えた。
(2011年 センター試験)




正解はCである。

レイチェル・カーソンは亡くなって、はや50年以上が経過したが、未だ環境問題の分野で出題されることが比較的多い人物である。アメリカの海洋学者であった彼女は環境倫理思想の先駆者とも呼ばれている。『沈黙の春』の中ではDDTなどの農薬がもたらす環境破壊を指摘し、経済優先の社会のあり方に警鐘を鳴らした。
 @について、地球を閉じた宇宙船ととらえる「地球船宇宙号」という言葉は、バックミンスター・フラーが提唱した概念であるので間違い。
 Aについて、「共有地の悲劇」とは、ギャレット・ハーディンが発表した概念であるので間違い。
 Bについて、人間は他の生物に対して責任を負っているという自覚の重要性を説いたのはヨナスと考えられるので間違い。
 Cについて、正しい。(9/15)



倫理模試の過去問をやってみよう(105)



(今回は「生命倫理」についての問題にトライします)

問 次のア〜ウの事例は日本の臓器移植法(1997年成立、2009年改正)でどう扱われるだろうか。ア〜ウの事例をA〜Dに分類した場合の組合せとして正しいものを、下の@〜Hのうちから一つ選べ。

ア Eさんは,脳死状態になった場合には心臓を提供したいという意思表示を口頭でしていた。 Eさんが14歳で脳死状態になったとき,両親はEさんの心臓の提供を病院に申し出た。
イ Fさんは,脳死状態になった場合には肝臓を提供することをドナーカード(臓器提供意思表示カード)に記していた。Fさんが15歳で脳死状態になったとき,両親はFさんの肝臓の提供を病院に申し出た。
ウ Gさんは,脳死状態になった場合には心臓と肝臓の提供を拒否することをドナーカードに記していた。 Gさんが16歳で脳死状態になったとき,両親はGさんの心臓と肝臓の提供を病院に申し出た。

A 改正前の臓器移植法でも改正後の臓器移植法でも提供が認められる。
B 改正前の臓器移植法でも改正後の臓器移植法でも提供が認められない。
C 改正前の臓器移植法では提供が認められないが,改正後は認められる。
D 改正前の臓器移植法では提供が認められるが,改正後は認められない。

@ ア−A  イ−B  ウ−C
A ア−A  イ−C  ウ−B
B ア−A  イ−C  ウ−D
C ア−B  イ−A  ウ−C
D ア−B  イ−A  ウ−D
E ア−B  イ−C  ウ−A
F ア−C  イ−A  ウ−B
G ア−C  イ−A  ウ−D
H ア−C  イ−B  ウ−A
(2012年センター試験)





正解はFである。

臓器移植法については、整理して頭に入れておこう。2009年の改正のポイントは、本人の承諾は必要なく、拒否の意志が明示されていなければ家族が了承すれば移植が可能となったこと。その提供者の年齢が15才未満でも可能となったこと。自分の家族に優先的に提供することも可能となったことなどがあげられる。

アについて、旧法では15才未満はどんな場合でもドナーにはなれなかったが、新法では年齢制限がなくなったので、本人が生前拒否の意志を示していない限り臓器提供はできるので、Cが該当する。
イについて、15才以上で本人に臓器提供の意志があり、家族もそれを認めていれば新法においてはもちろんのこと、旧法においても提供は認められるのでAが該当する。
ウについて、旧法でも新法でも、臓器提供については生前本人がそれを拒否していないということが大前提であるので、Bが該当する。(9/9)



倫理模試の過去問をやってみよう(104)



(今回は「生命倫理」についての問題にトライします)

問 クローンや遺伝子に関わる技術に関する記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから正しいものを一つ選べ。

@ 出生前診断によって、男女の判別や産み分けはまだできないが、胎児の障害の有無を知ることが部分的に可能になった。しかし、出生前診断が命の選別や新しい優生学につながるのではないかという批判もある。
A ヒトゲノムを解読しようとする試みは、1990年から進められ、2003年には解読の完了が宣言された。このことによって、どの遺伝子配列がどのような役割を果たすかについてすべて解明されたことになる。
B 1990年代後半、クローン羊ドリーが誕生し、ほ乳類の体細胞クローンの作成が可能であると知られるようになった。このクローン技術を応用すれば、拒絶反応のない移植用臓器の作成が将来は可能になるという主張もある。
C 遺伝子組み換え技術は、農薬や害虫に強い新しい品種の食物を作ることを可能にしている。既にいくつかの遺伝子組み換え作物が商品化され、その結果、安全性や環境への影響を疑問視する声はなくなった。
(2012年センター試験)




Bが正解である

 現代社会の諸問題は、教科書の一番最後にあり、学習がおろそかになりがちだが、あまり知られていない頻出分野であると言える。生命倫理・環境倫理、家族の課題・地域社会の問題、情報社会・グローバル化の問題・国際平和と問われる問題は多岐にわたる。

 @について、男女の判別は可能であり、倫理的な問題は別として、欲しい子どもの性でなければ堕胎を行えば産み分けも可能ではある。
 Aについて、ヒトゲノムの解読は終了したが、どの遺伝子の配列が何の役割を果たしているかまですべて解読されているわけではない。
 Bについて、正しい。ただし、「ヒトクローン技術規制法」によって、ヒトクローン胚を母胎に入れる行為は、日本では禁止されている。
 Cについて、「安全性や環境への影響を疑問視する声はなくなった」は誤り。今も安全性への問題点の指摘は多くあり、表示の義務化など規制が行われている。(9/1)



倫理模試の過去問をやってみよう(103)



(今回も「明治の思想」についての問題にトライします)

問 宮沢賢治の宗教観の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 報恩感謝の念仏で生きとし生けるものの極楽往生を目指す。
A 瞑想に専念して自由自在な無我の境地に入ることを目指す。
B 自己犠牲の精神で生きとし生けるものの幸福の実現を目指す。
C 世間を捨て去って難行苦行によって悟りを開くことを目指す。
(2008年 センター試験)




正解はBである。

近代日本の思想家については、詳しいところまで聞かれる場合は少ない。その人物に関わるキーワードを確実におさえて、代表的な思想の中身を覚えておこう。
 @について、彼は熱心な仏教信者であり、『法華経』にある献身する菩薩の生き方を理想としたが、念仏を唱え極楽浄土に人々を導こうとしたわけではない。
 Aについて、宗教的精神修養を目指したのではなく、現実社会への具体的貢献を目標としたので間違い。
 Bについて、これは正しい。
 Cについて、Aに記載したように自己の悟りのような脱世間的なものを求めた人ではなかった。(8/25)



倫理模試の過去問をやってみよう(102)



(今回も「明治の思想」についての問題にトライします)

問 近代日本においては、無名の人々に光を当てることで人間理解を深めようとする思想家たちが現れた。そのような思想家についての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 柳宗悦は、民衆の生活に根差した茶碗や皿に美を見出し、多くの無名の職人を有する日本民族の優秀性を説いた。
A 折口信夫は、古代日本人の心性に奥深く分け入る方法によって、「まれびと」としての神と人々との交流を理論化した。
B 柳田国男は、日本全国の民間伝承を収集し、『先祖の話』において江戸時代の日本人の精神構造を探究した。
C 南方熊楠は、自然と地域文化の宝庫である鎮守の森を保存するために、神社合祀を推進することを主張した。
(2007年センター試験)




Aが正解である

 近代日本の思想家についての問題は、近年よく出されるところである。思想家とそのキーワードおよび特徴的な思想内容などを整理して頭に入れておこう。

 @について、彼は朝鮮の美術・工芸の美も高く評価した。「日本民族の優秀性を説いた」というのは誤りである。
 Aについて、正しい。
 Bについて、『先祖の話』は日本人の死生観について著したものであるので間違い。
 Cについて、「神社合祀を推進することを主張した」のではなく、反対したのである。(8/17)



倫理模試の過去問をやってみよう(101)



(今回も「明治の思想」についての問題にトライします)

問 柳田国男に関する記述として適当でないものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 古い民間伝承や習俗を研究する知識人をたずねて日本全国をめぐり、日本の基層文化を探った。
A 日本民族と水田稲作とは不可分の関係にあるとして、日本文化の基底に稲作文化を置いた。
B 祝祭日といった近代の制度の導入以前にも、日本人はハレとケを区別していたことを示した。
C 沖縄研究を行い、日本人は中国大陸から宝貝を求めて南西の島々に渡ってきたと推論した。
(2007年 駿台模試)





@が適当でないので、これが正解である

この問題は、柳田国男に関して一見細かい知識が問われているように見えるが、彼のキーワードである「常民」の意味が理解できていれば、即座に@が誤りであることが分かる。 彼のフィールドワークの対象は「常民」であり「知識人」などではなかった。 仮にABCについては、柳田国男に関する記述であるかどうかの明確な材料を持っていなくても@が明らかな誤りであるので答えは出せるはずである。(8/10)



倫理模試の過去問をやってみよう(100)



(今回も「明治の思想」についての問題にトライします)

問 日本の風土をモンスーン型と名づけた思想家に和辻哲郎がいる。彼の思想の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 自己の反省や判断以前の物事の直接的な状態こそ真の実在であり、それは主観と客観、精神と身体、心と者といったような対立や区別の根底にあり、あるいはそれらを包んでいるようなものである。
A 農村漁村に残る生活習慣や民間伝承を伝えていく階層が、日本民族の正体を知るうえで重要であり、彼らの日常生活の小さな事件や何代にもわたる努力の積み重ねが今日の社会を形成してきた。
B 人間が超えることもできないし、変化させることもできない究極の壁のようなものが存在するのであり、人間はこの壁に直面したとき、挫折を経験して自己の有限性を自覚し、自己を超えた超越者の存在を感じることができる。
C 人間の存在は他人との行為的連関の中ではじめて人間たりうる存在であり、人間は個人としての自主的な自己を自覚して生きると同時に、個人を否定して社会の一員として生きる。
(2011 駿台模試)




正解はCである。

 和辻哲郎は、『風土』という書物を著し、世界の風土をモンスーン型、砂漠型、牧場型に分け、日本を多神教のモンスーン型の風土に属すると考えた。また、人間存在を間柄的であると考え、人間は決して孤立した存在ではなく、人と人との関係においてのみ人間たりうると説いた。さらに、個人と社会は人間そのものの二つの側面であり、人間というものは個人と社会という対立的なものの弁証法的統一であると考えた。さらに、個人から社会へ、社会から個人へと働きかける相互作用の中に倫理が成立するとした。

@について、これは西田幾多郎の思想について述べたものであるので間違い。
Aについて、これは柳田国男の考え方を述べたものであるので間違い。
Bについて、これは西洋実存主義思想家であるヤスパースの思想であるので間違い。
Cについて、これが正しい。(8/6)



倫理模試の過去問をやってみよう(99)



(今回も「明治の思想」についての問題にトライします)

問 西洋思想と東洋思想の両者を摂取することによって独創的な哲学を構築した西田幾多郎に関する説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 人間は本来、孤立的な個人であると考え、そのような個人が共同して社会的規範を作りあげるところに倫理は成立するとした。
A 主観と客観の分離対立は認識が成り立つための条件であると考え、真の実在は客観的に認識することができるとした。
B 主観と客観の区別が現れる以前の最も直接的な経験が唯一の真の実在であると考え、そこからすべての事象を説明しようとした。
C 人間は本来、個人的であるとともに社会的な存在であると考え、そのような人間存在のあり方を間柄的存在ととらえた。
(2006 駿台模試)




正解はBであり、これが正しい。

 西田幾多郎は、西洋哲学は一般的に、主観と客観、精神と物質とを対立的に取り扱うことが多いのに対し、自らの参禅体験からそれらが未分化な直接的な体験、すなわち純粋経験が唯一の真の実在であると考えたのである。
@について、「人間は本来、孤立的な個人である」という考え方は、西洋近代哲学に見られるもので、西田は自他の区別も否定する純粋経験の中に真の自己を求めたので間違いである。
Aについて、主客未分の純粋経験が真の実在であると述べているので「真の実在は客観的に認識することができるとした」のは間違いである。
Bについて、正しい。
Cについて、これは和辻哲郎についての説明であるので間違いである。(7/27)



倫理模試の過去問をやってみよう(98)



(今回も「明治の思想」についての問題にトライします)

問 夏目漱石は、日本の近代化が西洋への同化の方向に進行するなかで、個人主義という生き方を確立すべきことを提唱した。夏目漱石の個人主義の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ キリスト教の信仰と日本への愛を誓い、それに生涯をささげること。
A 他人のことを気にかけることなく、自分の主張を最後まで貫くこと。
B 俗世間から離れて静かに暮らし、利己主義の克服を目指すこと。
C 他者の個性を伸長しながら、同時に自己の個性を生かすこと。
(2006 駿台模試)




正解はCであり、これが正しい。

 漱石は「私の個人主義」という講演の中で、個人主義とは何かということに関して、それは、「自己の個性の発展をなし遂げようと思うなら、同時に他人の個性も尊重しなければならない」ということであるとか、「他の存在を尊敬すると同時に自分の存在も尊敬する」ということであるとのべていることなどを頭に入れたうえで正解を導いていこう。難易度は高くない問題である。
@について、これは、内村鑑三の生き方を指すものである。彼は「二つのJ」に生涯をささげるとの誓いをたてた。
Aについて、「他人のことを気にかけることなく」は、明らかに誤りである。
Bについて、「俗世間から離れて静かに暮らし」というようなあり方は彼にはない。あくまで社会生活の中で個人主義は実現されるべきものだとした。
C正しい。(7/20)



倫理模試の過去問をやってみよう(97)



(今回も「明治の思想」についての問題にトライします)

問 中江兆民から唯物論的な思想を学んだ幸徳秋水についての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 国は人民によってできたものであると平易に民権思想を説き、主権在民をうたい抵抗権を認める私擬憲法を起草した。
A 国を支える農業と農民を大切に考え、農民が苦しむ公害問題を解決する運動に身を投じ、その解決の必要性を説いた。
B 東洋の学問を実生活に役立たない虚学、西洋の学問を実生活に役立つ実学と呼び、後者を学ぶことの必要性を説いた。
C 社会主義の立場から、当時の帝国主義を、愛国心を経(たていと)とし軍国主義を緯(よこいと)とする20世紀の怪物と呼び、批判した。
(2009年 センター試験)




Cが正解である

 センター試験に出題された問題としては簡単な部類に入る問題である。正解以外の選択肢も、教科書レベルの人物である。主要人物については、キーワードを含めて間違いなく頭に入れておこう。
 @について、「主権在民をうたい抵抗権を認める私擬憲法を起草」から植木枝盛のことであることが分かる。
 Aについて、足尾銅山鉱毒事件のことで、田中正造のことであることが分かる。
 Bについて、これは福沢諭吉の言であるので間違いである。
 Cについて、これは幸徳秋水の著書『廿世紀之怪物帝国主義』の中にある一文であるので正しい。(7/13)



倫理模試の過去問をやってみよう(96)



(今回も「明治の思想」についての問題にトライします)

問 日本の代表的なキリスト教思想家に内村鑑三がいる。内村の思想に関する説明として適当でないものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 英文で『武士道』を著して日本人の道徳を欧米に紹介し、自らのキリスト教を「武士道に接木されたるキリスト教」であると説いた。
A イエスと日本は矛盾するものではなく、近代化の中で混迷する日本人の精神的再生のために、イエスへの純粋な内面的信仰の大切さを説いた。
B 人間は、神の前に独り立つ存在であり、教会や儀式にとらわれず、直接聖書を読むことに基づく信仰を重んじるべきであると説いた。
C 日本は純粋な信仰が行われ信義を重んじる国であり、拝金主義や人種差別が蔓延する外国よりも、真のキリスト教が根づく国であると説いた。
(2007年センター試験)




@が正解である

 内村鑑三について問われる時は、同じ札幌農大でキリスト教の洗礼を受けた、新渡戸稲造と混同してはいないかを問う問題が多く見受けられる。両人の違いははっきりと頭に入れておこう。

 @について、これは新渡戸稲造のことである。
 Aについて、「二つのJ」を唱えて、彼は日本とキリストのために生きると誓った。
 Bについて、教職を辞して後の彼のキリスト教信仰の信条である。
 Cについて、これは有名な彼の主張である。(7/6)



倫理模試の過去問をやってみよう(95)



(今回も「明治の思想」についての問題にトライします)

問 中江兆民と夏目漱石についての記述として最も適当なものを、次の@〜Eのうちからそれぞれ一つずつ選べ。

@ 明治政府の留学生として渡仏しルソーの思想に強い感化を受け、帰国後、『民約訳解』を出し、1887年、危険人物として東京を追放された。
A 英米に留学し、帰国後、明六社を創立して妾をもつことや男尊女卑などの封建的慣習を批判し、一夫一婦制こそ近代社会の基礎であると主張した。
B オランダに留学し、帰国後、明六社同人となり、西洋近代思想の啓蒙活動をしながら、哲学・主観・客観・理性・悟性など多くの哲学用語を案出した。
C 英国留学の経験から、日本国民を他人本位の「根のない浮草」になっていると批判し、自我の確立とエゴイズムの葛藤に苦闘した。
D 自費渡米して真のピューリタニズムに帰依して帰国、第一高等学校時代に教育勅語の奉戴式で敬礼を拒み、国家主義者から攻撃され教壇を去った。
E 咸臨丸で幕府使節の従者として渡米、その後も欧米に渡航し西洋文明通となる。明六社に加わり、独立自尊の気概を説き、在野から啓蒙活動に努めた。
(2007年 駿台模試)




中江兆民は@、夏目漱石はCである。

そんなに難しい問題ではない。教科書に出てくる思想家の著書や思想内容、また生涯などのうち教科書レベルのものを押さえておけばできる。また、このような問題では、仮に問われている人物について忘れていてもあきらめないこと。消去法で正解を導くこともできる。

@について、「渡仏しルソーの思想に強い感化を受け」や「帰国後、『民約訳解』を出し」から中江兆民であることがわかる。
Aについて、初代文部大臣の森有礼のことである。
Bについて、多くの哲学的用語を案出したという記述から西周であることがわかる。
Cについて、「自己本位」とは彼のキーワードといえる。
Dについて、これは「二つのJ」に人生をささげるとした内村鑑三のことである。
Eについて、これは慶応義塾を開いた福沢諭吉のことである。(6/30)


倫理模試の過去問をやってみよう(94)



(今回は「明治の思想」についての問題にトライします)

問 啓蒙思想家たちが結成したグループに明六社がある。次のア・イは明六社のメンバーに関する記述であるが、それぞれ誰のことか。その組合せとして最も適当なものを、下の@〜Cのうちから一つ選べ。

ア 夫婦の相互的な権利と義務に基づく婚姻形態を提唱し、自らも実践した。
イ 「哲学」、「理性」等の訳語を案出し、西洋哲学移入の基礎を作り上げた。

@ ア 中村正直  イ 加藤弘之
A ア 中村正直  イ 西 周
B ア 森有礼   イ 加藤弘之
C ア 森有礼   イ 西 周
(2006年 センター試験)




正解はCです。

 簡単な問題。森有礼は明六社の創設者。西周はそこに加わっていた。教科書を読んでいれば、すぐ答えられる。基本的な事項をまず確実におさえておこう。(6/22)




倫理模試の過去問をやってみよう(93)



(今回は「幕末の思想」についての問題にトライします)

問 近世の思想家について記したア〜エは、それらの思想家の説明である。それぞれ誰のことか。その組合せとして最も適当なものを、下の@〜Eのうちから一つ選べ。

ア 古代中国の聖人が制作した儀礼・音楽・刑罰・政治などの制度こそが、天下を安んずるための「道」であるとし、心の修養を求めることよりも、具体的な「道」を学び実践することによる効果の方が重要であると説いた。
イ すべての人々が田畑を耕して衣食住を自給する平等社会を、理想的な「自然世」と呼んだ。そして、みずから耕さずに農民に寄生している武士などが存在する当時の差別社会を「法世」と呼び、「自然世」への復帰を説いた。
ウ 名を求め、恥を知るという心のあり方を重んじる中世的な気風の武士道を批判し、儒学に基づく武士道としての「士道」を説いた。そして、武士は道徳的な指導者となって人倫の道を天下に実現すべきであると主張した。
エ アへン戦争で清がイギリスに敗北したことに衝撃を受け、西洋諸国に対抗するためには科学技術の移入が必要であると考えた。そして、「東洋道徳」とともに「西洋芸術」をも詳しく学ぶべきであると主張した。

@ ア 荻生徂徠  イ 安藤昌益  ウ 山鹿素行  エ 佐久間象山
A ア 安藤昌益  イ 山鹿素行  ウ 荻生徂徠  エ 高野長英
B ア 山鹿素行  イ 安藤昌益  ウ 荻生徂徠  エ 佐久間象山
C ア 山鹿素行  イ 荻生徂徠  ウ 安藤昌益  エ 吉田松陰
D ア 荻生徂徠  イ 山鹿素行  ウ 安藤昌益  エ 高野長英
E ア 安藤昌益  イ 荻生徂徠  ウ 山鹿素行  エ 吉田松陰
(2011年 センター試験より)





正解は@である。

 簡単な問題である。主要な人物とその人物の思想をしっかり頭に入れておこう。

@について、古学の思想家を示しており、「安天下の道」と言えば荻生徂徠のことである。
Aについて、「自然世」「法世」また「不耕貪食の徒」といえば安藤昌益のことであるとすぐ分かるはずである。
Bについて、山鹿素行のことである。「武士道とは死ぬことに見つけたり」と言ったのは山本常朝であることも同時に覚えておこう。
Cについて、「東洋道徳、西洋芸術」は佐久間象山の言である。(6/15)


倫理模試の過去問をやってみよう(92)



(今回は「江戸時代の庶民の思想」についての問題にトライします)

問 江戸時代の民衆の側に立って思想活動をした人物の記述として適当でないものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 大地に働きかけて衣食住の糧を得ることが人間本来の姿であると考えた安藤昌益は、武士や職人や商人が農民の労働に寄生していると批判したが、僧侶や儒者たちは農民や貧者に同情を寄せているとして高く評価した。
A 大坂の商人たちが建てた懐徳堂に学び、自由な気風を身につけた富永仲本は、仏教の経典はブッダの教えに加上することでできたとし、権威や権力に媚びることなく先人の教えをさらに遡って研究することの大切さを説いた。
B 農業は天道と人道という二つの道の共同によって可能になると考えた二宮尊徳は、分に応じた生活と自分を支えてくれた人々への感謝の念を大切と考え、分度と推譲を説いた。
C 講席を設けて、民衆に儒教・仏教・神道を融合した独自の庶民道徳を説いた石田梅岩は、士農工商の身分は職分であると考え、人々はそれぞれの職分に力を尽くすことで天下のために尽くしているのだと説いた。

(2012年 駿台直前模試)




@が適当でないので正解である

安藤昌益はすべての人が農業にたずさわり生活の糧を得る社会、つまり万人直耕を理想とした。それゆえ、士工商の各身分は、農民の労働に寄生していると非難した。そして現代のような社会を肯定している僧侶や儒者も批判の対象としたのである。

 @について、前半は正しいが、最後のところの僧侶や儒者たちを高く評価しているというところは間違いである。彼はこれらの人も不耕貪食の徒と呼んで非難した。
 Aについて、正しい。大乗仏教は釈迦が唱えたものでないとして大乗非仏説を主張したことでも知られている。
 Bについて、正しい。
 Cについて、正しい。これを石門心学と呼んでいる。(6/8)



倫理模試の過去問をやってみよう(91)



(今回も「江戸時代の国学」についての問題にトライします)

問 平田篤胤に関する説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。 

@ 古道の研究を、特に歌論の中に展開し、「ますらをぶり」に日本的心情の典型を見いだして、そこにおける「高く直き心」を理想とした。
A 仏教・儒教・神道の教えをそのまま受け取るのではなく、教えの成立過程から、それぞれの思想史上の意義を相対的に見ることを説いた。
B 功名や利欲を離れた純粋な心情に徹して、己の誠を尽くせば天道と一体になると説き、幕末の志士たちに勤皇の精神を強調した。
C 古来の神道の姿を求めて、復古神道を提唱し、現実の生の背後にある死後の霊魂の行方を論じて、その教えは民間にも広まった。
(2004年センター試験)




Cが正解である

 平田篤胤についてはセンター試験で問われる頻度は多くはない。この思想家については、キーワードを中心として最低限のことを頭に入れておけばよいであろう。「復古神道」とその神道の内容をもう一度確認しておこう。

 @について、「ますらをぶり」「高く直き心」から賀茂真淵のことであることが分かる。間違いである。
 Aについて、江戸中期の町人出身の思想家である富永仲基の主張であるので間違い。
 Bについて、「誠」「天道と一体」「勤皇の精神を強調」などから吉田松陰の主張であることがわかるので間違い。
 Cについて、正しい。死後の世界(幽冥界)の研究者としても有名で近代民俗学の源流を築いた一人であったことも知っておこう。(6/1)



倫理模試の過去問をやってみよう(90)



(今回は「江戸時代の国学」についての問題にトライします)

問 本居宣長に関しての次の文章を読んで、その説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

 漢意とは、漢国のふりを好み、かの国をたふとぶのみをいふにあらず。大かた世の人の、万の事の善悪是非をあげつらひ、物の理をさだめいふたぐひ、すべてみな漢籍の趣なるをいふ也。さるはからぶみをよみたる人のみ、然るにはあらず。書といふ物一つも身たることなき者までも、同じこと也。(本居宣長 『玉勝間』)

@ 中国風なやり方をまねるだけで、中国の古典を真剣には読まないうわべだけの姿勢を改めなければならない。
A 中国の古典を大事にするだけではなく、物の道理について原理的に議論しようとする姿勢すべてが漢意である。
B 中国の古典は根本的に誤っているので、とにかく中国風の書物だけは身を遠ざけるようにしたほうがよい。
C 中国の古典を実際には読みもせずにその是非を論じている人がいるが、そうした姿勢は絶対に許されない。
(2014 駿台模試)




正解はAであり、これが正しい。

 漢意とは中国風の考え方だと単純に覚えないようにしよう。あらゆる物事に関して善悪や是非を論じたり、物の道理を断定したり理屈で判断したりする態度を言う。そのような人間の態度やあり方を指しているのである。

@について、中国の古典を真剣に読むようにせよと書かれているが、これは本居宣長の主張とは正反対なので間違いである。
Bについて、中国の古典を遠ざければそれでよいとするのは短絡的である。漢意は中国的な物の理にこだわる姿勢のことを言っているので間違いである。
Cについて、宣長の主張とは異なる。また彼は中国の古典の是非を述べているのではなく、物事を理屈でもって考えるあり方を批判しているのである。(5/28)



倫理模試の過去問をやってみよう(89)



(今回は「江戸時代の国学」についての問題にトライします)

問  賀茂真淵が『万葉集』に見いだした「日本人の理想的な精神」の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 素朴で力強く、おおらかさを重んじる精神。
A 対立を避け、調和と秩序を重んじる「和」の精神。
B 優しさを重んじる「たをやめぶり」の精神。
C あらゆる外来思想を融合させた精神。
(2002年 センター試験)




正解は@である。

代表的な国学者には契沖・荷田春満・賀茂真淵・本居宣長らがいる。特に後半の二人は日本の古代の心にどのようなものを見つけ出したかを区別して頭に入れておこう。賀茂真淵は、男性的な力強いものを見い出し、本居宣長は繊細で女性的な精神を見い出した。
 @について、これを彼は「ますらをぶり」とか「高く直き心」と呼んだ。
 Aについて、これは聖徳太子の考え方だと言えるので間違い。
 Bについて、これは本居宣長の主張であるので間違い。
 Cについて、国学の考え方は外来思想が流入する前の日本古来の心を研究しそこに日本の伝統を見ることであるのでこれは間違い。(5/20)


倫理模試の過去問をやってみよう(88)



(今回は「江戸時代の古学」についての問題にトライします)

問 古学派に関する説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 山鹿素行は、朱子学が現世における道徳の追究に専念したことを批判し、宇宙の構造の哲学的解明にもとづいて人間の道徳を探究するという古代の儒学のあり方への回帰を主張した。
A 伊藤仁斎は、孔子の儒学が、孔子以前の理想的な君主達の作り上げた「安天下の道」を伝えたものだと考え、儒学の経典の『六経』をそうした道を示した書物として最も重視した。
B 荻生徂徠は、孔子の言行を記した『論語』こそが真実の道徳を示す「最上至極宇宙第一の書」であり、『孟子』は『論語』を補足する書として二番目に重要であると考えた。
C 古代の儒学の原典を後世の注釈に頼らずに直接研究するという古学派の方法は、国学に移植され、日本の古典の内に流れる精神の外来思想の影響を排除して理解するという国学のあり方を支えることとなった。
(2006年 駿台模試)




Cが正解である

後世の注釈書にとらわれず古代の原典を直接に研究するという古学の方法論は、古学を学んだ国学者たちによって、日本の古典の研究に応用されることになった。そして国学は、外来思想に影響された後世の解釈を排して日本古来の精神世界を探究していくことになるのである。

 @について、「朱子学が現世における道徳の追究に専念したことを批判し」がおかしい。「現世における道徳の追究に専念した」のが孔子の時代の儒学である。「宇宙の構造の哲学的解明にもとづいて人間の道徳を探究する」というのが朱子学の立場である。それらのことから考えてこの選択肢は間違いである。
 Aについて、これは荻生徂徠のことであるので誤りである。
 Bについて、これは伊藤仁斎のことであるので誤りである。
 Cについて、これは正しい。(5/13)


倫理模試の過去問をやってみよう(87)



(今回も「江戸時代の儒教」についての問題にトライします)

問 中江藤樹の思想の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 朱子学の天理の抽象性を批判して古学を提唱し、道徳的指導者としての武士の在り方を士道論として展開した。
A すべての人の心には、神妙不測の孝の徳がそなわっていると説き、その孝に依拠して身を立て道を行うことを修養の根本とした。
B 平易な生活道徳としての正直と倹約の実践を唱え、それまで低く見られていた商人の営みに社会的な存在意義を与えた。
C 身分制度を否定し、農業を重視する立場に立って、万人が直耕する自然世を理想として説いた。
(2003年センター試験)





正解はAである。

ひじょうに平易な問題である。各々の人物の特徴はしっかりおさえておこう。
@について、これは山鹿素行について説明したものであるので、間違い。
Aについて、これは中江藤樹について説明したものであるので、正しい。
Bについて、これは石田梅岩について説明したものであるので、間違い。
Cについて、これは安藤昌益について説明したものであるので、間違い。(5/5)


倫理模試の過去問をやってみよう(86)



(今回も「江戸時代の儒教」についての問題にトライします)

問 次のア〜ウの朱子学者たちの説明として最も適当なものを、下のA〜Dから選びその組合せとして正しいものを、下の@〜Gのうちから一つ選べ。

ア 山崎闇斎      イ 新井白石      ウ 林羅山

A 朱子学に基づき、政治の場面で活躍するとともに、イタリア人宣教師シドッチとの対話に基づいて、世界の地理や風俗を記述し、朱子学の立場からキリスト教の教説に対する批判を述べた。
B 心をつつしむ修養の厳格な実践を説き、後に儒教と日本の神話とを結合させた垂加神道と呼ばれる独自の神道説を唱えた。また、京都に塾を設け多くの門弟を養成した。
C 従来の朱子学者は日本の神々を中心に考えてきたと批判し、朱子のみを尊ぶ立場を選び、家や国家を超えた理に基づいて考えるべきだと説いたため、師に破門された。
D 万物を貫く普遍的な理を想定し、人の心のうちに宿る理を善とした。理の正しい発現を妨げる人欲を悪とし、善の発現に向けて、事物の理を窮め、心をつつしむ修養を説いて、官学の祖となった。

@ ア―B  イ―A  ウ―D
A ア―B  イ―C  ウ―A
B ア―A  イ―C  ウ―D
C ア―A  イ―D  ウ―C
D ア―C  イ―D  ウ―B
E ア―C  イ―B  ウ―A
F ア―D  イ―A  ウ―B
G ア―D  イ―B  ウ―C
(2012年 センター試験)




   正解は@です。

  朱子学者としては、垂加神道を唱えた山崎闇斎、『西洋紀聞』を著した新井白石、朝鮮外交に貢献した雨森芳州などがいることをおさえておこう。
Aについては、「イタリア人宣教師シドッチとの対話に基づいて、世界の地理や風俗を記述し」から新井白石であると分かる。
Bについては、「垂加神道と呼ばれる独自の神道説を唱えた」という記述から山崎闇斎だと分かる。
Dについては、「事物の理を窮め、心をつつしむ修養を説いて、官学の祖となった」という記述から林羅山とわかる。(4/28)



倫理模試の過去問をやってみよう(85)



(今回は「江戸時代の儒教」についての問題にトライします)

問 林羅山の主張として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 天地に理法があるように、人にも身分が定められており、つつしみをもってそれを体現するように心がけるべきである。
A 天地のままなる古代の人々は、簡素で力強い心情をもって生きていたので、それを取り戻すために古典に触れるべきである。
B 主従の人間関係を成り立たせ、万物を生み出す心に従って、上の者をうやまい下の者をあなどらないようにするべきである。
C 武士は、欲望に惑ってはならないが、おのれの心の内に湧き上がる欲望や情念を礼によってとりつくろわないようにするべきである。
(2006年 駿台模試)




@が正解である

江戸時代の朱子学者である林羅山は、理気二元論の立場から、天地の理法を世俗の秩序に見い出す上下定分の理を主張して、天地の理法を体現する心のあり方として、つつしみをもつように心がける存心持敬を説いた。

 @について、これは正しい。
 Aについて、これは江戸時代の国学者である賀茂真淵の主張である。
 Bについて、これは江戸時代の儒学者で日本陽明学の祖とも言われる中江藤樹の思想である。
 Cについて、これは江戸時代の古学者である山鹿素行の主張である。(4/23)



倫理模試の過去問をやってみよう(84)



(今回は「江戸時代の儒教」についての問題にトライします)

問 戦国の動乱による民衆の苦しみを憂え、自身の無力を嘆いた臨済宗の僧藤原惺窩は、早くから儒学を志してもいた。惺窩は、慶長の役で連行された朝鮮の朱子学者姜(カンハン)に接し、その学識と人格に強く心を動かされる。惺窩が身を転じ、儒学者として独立した背景の一つには、この出会いがあった。惺窩の思想的展開の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 禅宗が支配層の支持を集めていたのに対し、民衆の強い支持を得ていた儒学の影響力の大きさに注目し、国教にすることを主張した。
A 実社会の利害にまみれた禅宗よりも、出世間を説く儒学の教えに深く共感し、権力者におもねることなく多くの優れた弟子を養成した。
B 道徳や礼儀による社会秩序を説く儒学の教えに強く引かれ、儒学を五山僧の教養から独立させて、近世日本に定着させる端緒をなした。
C 身分秩序を重んじ社会の安定を説く儒学に心を動かされ、徳川家康に仕えて、幕藩体制を支える学問としての朱子学の基礎を固めた。
(2010年センター試験)





正解はBです。

江戸時代の官学としての朱子学の基礎を築いたのは林羅山であるが、彼の師は藤原惺窩であり、彼の推挙でその地位についたのである。藤原惺窩が僧侶から還俗した動機は明確に理解しておこう。

@について、儒学は一部の人々の教養の対象であり、民衆にはあまり広まっておらず、ゆえに支持を得ていたというのは間違いである。
Aについて、禅宗などの宗教は出世間を説くのに対して、現実世界についてのあり方を説く朱子学引かれて彼は還俗したのであるからこの選択肢は間違いである。
Bについて、正しい。
Cについて、彼自身は任官せず、弟子の林羅山をその役に推挙したのでこの選択肢は間違いである。(30 4/20)


倫理模試の過去問をやってみよう(83)



(今回も「鎌倉時代の仏教」についての問題にトライします)

問 『法華経』による社会的安定の到来を説いた日蓮についての記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 『法華経』は、すべての人の救済と、浄土は現実のこの世界に実現されることとを説いているとして、末法の世を否定した。
A 『法華経』は釈迦の説いた究極の経典だから、これを毎日読経する人は他宗を信仰していても必ず救われると主張した。
B 『法華経』は久遠実成の阿弥陀仏の教えだから、この仏の名を唱えれば、国土の安穏と人々の幸福が約束されると説いた。
C 『法華経』は正法を広める者が迫害されることを予言しているとして、度重なる迫害の中で、世を救う己の使命を確信した。
(2006年 センター試験)




正解はCである。

 日蓮宗は阿弥陀仏信仰ではない。『法華経』以外の他宗を激しく批判し、折伏という改宗をせまったことなどの特徴がある。鎌倉仏教の一つとして整理し頭にいれておこう。

 @について、日蓮は末法の世を救うことのできる唯一の教えが『法華経』であるとした。末法思想を否定してはいないので間違い。
 Aについて、「四箇格言」を主張し、他宗を徹底的に排撃したので、この選択肢は間違い。
 Bについて、『法華経』は阿弥陀仏の教えではない。阿弥陀仏とは浄土宗などが信心の対象とした仏であるので間違い。
 Cについて、正しい。(4/14)


倫理模試の過去問をやってみよう(82)



(今回も「鎌倉時代の仏教」についての問題にトライします)

問 日本曹洞宗の開祖である道元についての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 修証一等とは、道元が坐禅の神髄として示した言葉の一つで、坐禅(修)は悟り(証)のための手段であり、悟りは坐禅の結果として得られるものである。それゆえ、坐禅と悟りは一体ではありえないとした。
A 心身脱落とは、道元が坐禅の神髄として示した言葉の一つで、身体も精神も一切の執着を離れ、無我に徹した時、人間の本性である仏性が実現し、山川草木と一体となった悟りの境地に入ることである。
B 自然法爾とは、道元が坐禅の神髄として示した言葉の一つで、すべては阿弥陀如来のはからいによるおのずからなる働きであり、坐禅することは無心になってその仏のはからいに自己の身を任せることである。
C 即身成仏とは、道元が坐禅の神髄として示した言葉の一つで、線香の礼拝、念仏などを排し、一切の理屈や世事を捨てて、ただひたすら三密の行という純粋な実践に打ち込むことである。

(2013年 駿台直前模試)




Aが正解である

鎌倉仏教の中でも栄西と道元は自力による救済を追究した。特に道元は、末法思想は方便であるとして否定した。また、彼に関わる言葉も多く、「只管打座」「心身脱落」「修証一等」などはその内容を正確に把握しておこう。

 @について、一等とは一つで等しいという意味であることはわかるはずである。つまり、坐禅(修)と悟り(証)は一体であるとする考え方であるので、この選択肢は明らかに間違いである。
 Aについて、正しい。この言葉は師である如浄に授けられた言葉である。
 Bについて、自然法爾とは親鸞の絶対他力の立場を示す言葉であるので間違い。
 Cについて、即身成仏は空海の真言宗の根本思想を示す言葉であるので間違い。(4/8)


倫理模試の過去問をやってみよう(81)



(今回も「鎌倉時代の仏教」についての問題にトライします)

問 日本臨済宗の開祖である栄西の教えとして最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 仏のまなざしから見れば、貧富や身分の上下は見せかけにすぎない。為政者は仏の眼差しを心にとめて人々に対するべきだ。
A この世界は、欲望や苦悩に満ちている。この世をけがれた世として厭(いと)い、極楽浄土に往生することを願い求めなければならない。
B 山川や草木といった、心をもたないものさえも仏性をもち、ことごとく真理と一体になって成仏することができる。
C 末法の時代であっても戒律を守り、坐禅の修行に励み、国家に役立つ優れた人物を育成することが重要である。
(2010年 センター試験)




正解はCである。

 栄西の主著は『興禅護国論』である。その中で、禅の振興が国の守護につながると説いた。また医薬としての茶を日本に広めたことでも知られている。坐禅や公案という特別の問題が出され、それを追及していくうちにあらわれる疑問を突き抜けたところに悟りがあるという。
 @について、栄西の考えとは異なるので間違い。
 Aについて、源信の説いていることなので間違い。
 Bについて、前半は一切衆生悉有仏性の考え方で、大乗仏教や最澄の思想に特徴的に見られるものなので間違い。
 Cについて、栄西の思想の特徴をあらわしており正しい。(4/5)


倫理模試の過去問をやってみよう(80)



(今回から「鎌倉時代の仏教」についての問題にトライします)

問 法然と一遍についての説明として最も適当なものを、次の@〜Eのうちから一つずつ選べ。

@ 一念の信によって往生は決定しているもので、念仏はただ仏への感謝の表現としてのものであり、その念仏も自分で唱えるのではなく、信心も自ら起こしたものではなく、すべて弥陀の本願力によるものだと説いた。
A 精神を統一する三密の行を深めていくと、仏の清らかな心が行者の心に反映し、行者の心も仏の心に同化していくと説き、このように自己の心が仏の心と一体であることを体験するとき、成仏できると主張した。
B 「南無阿弥陀仏」の名号に真実のすべてが含まれているとし、いっさいの思いを捨て自力の心を離れてこれを唱えれば、そこに救いがあると説き、念仏を唱えながら踊る踊り念仏を広めた。
C 現世は仏の教えを理解するものも実践するものもいなくなる末法の世であると説き、来世こそ求めるべき浄土であり、観想念仏と称名念仏によって極楽往生すべきことを人々に勧めた。
D 念仏の教えこそ末法の世にふさわしい教えであり、称名念仏こそが、仏の本願にかなう唯一の行いであると説き、その他の造寺・造仏などの行いはいっさい不要であるとした。
E 人間はみな等しく悟りうる可能性を持っていると考え、ひたすら仏道に励むことにより、おのずから邪念は消えて、心身の執着から解き放たれた悟りの境地が実現できると説いた。
(2007年 駿台直前模試)




Bが正解である

一遍は時宗の開祖である。彼の信仰の核心は阿弥陀信仰ではあるが、救いは念仏を唱えようとする衆生の努力や阿弥陀如来の力によるのではなく、南無阿弥陀仏という名号そのものにあるとした。それゆえ、信不信にかかわらずひたすら念仏を唱えれば、そこに救いの世界があるとしたのである。鎌倉仏教は日本思想の中では頻出分野である。宗派ごとの思想の違いをしっかりとおさえておこう。

 @について、これは、親鸞の教えについての説明であるので間違い。
 Aについて、これは、空海の教えについての説明であるので間違い。
 Bについて、これが一遍のおしえであり、正しい。彼は人々の信・不信は問題とせず、ただひたすら唱えよと説いた。
 Cについて、浄土信仰の教えである。観想念仏を主に唱えたのは源信である。これは間違い。
 Dについて、これは法然のとらえかただと考えられるので間違い。
 Eについて、これは道元の考え方であるので間違い。(4/1)



倫理模試の過去問をやってみよう(79)



(今回も「平安後期の仏教」についての問題にトライします)

問 阿弥陀仏の誓願(本願)についての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@『無量寿経』に説かれた四十八の誓願からなり、阿弥陀仏を信じてひたむきに名号を称える者は一人残らず浄土へ往生させるという内容を中心とする。
A『無量寿経』に説かれた四十八の誓願からなり、阿弥陀仏を信じてひたむきに唱題にはげむ者は一人残らず浄土へ往生させるという内容を中心とする。
B『法華経』に説かれた四十八の誓願からなり、阿弥陀仏を信じてひたむきに真言を称える者は一人残らず浄土へ往生させるという内容を中心とする。
C『法華経』に説かれた四十八の誓願からなり、阿弥陀仏を信じてひたむきに坐禅にはげむ者は一人残らず浄土へ往生させるという内容を中心とする。
(2012年センター試験)





正解は@である。

浄土信仰では、「南無阿弥陀仏」と念仏すれば、往生できると説く。なぜか、それは法僧が修行時代にたてた48の誓願に根拠がある。このことについて理解していなければ、称名念仏で救われるという理由も分かってこない。ここで再度学習しておこう。

@について、法僧はすべての衆生が浄土へ往生できるようにならないかぎり自分は仏とならないと誓願をたてが、今「阿弥陀仏」となっている。ということは彼の誓願は成就されたのである。つまり「阿弥陀仏」に帰依すればその力でもってすべてのひとが浄土に往生できるということになるのである
Aについて、唱題とは日蓮が「南無妙法蓮華経」と唱えることによりその言葉が持つ功徳により成仏できると説いたものであるのでここで使うことは適さない。間違いである。
Bについて、真言は空海の真言密教におけるものであるので間違い。
Cについて、浄土信仰は他力信仰であるので、坐禅の必要性を説くようなことはないので間違い。(3/27)


倫理模試の過去問をやってみよう(78)



(今回も「平安後期の仏教」についての問題にトライします)

問 末法の世についての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 仏陀の教説はすべて忘れ去られ、悟りに向かう方法が一切確認できない時代。
A 仏陀の教説だけが残り、修行も行われず、悟りも得られないとされる時代。
B 仏陀の教説が曲解され、その生まれ変わりを僭称する人物が誤った道を指し示す時代。
C 仏陀の教説は残り、修行は行われるが、それにより悟りを得ることはできない時代。
(2009年 Z会)




Aが正解である

末法思想とは、一般的に釈迦入滅後、500年は釈迦の教え、修行者、悟りが存在する正法の時代であるが、その後1000年のそれらの中の悟りが失われる時代を経て、その後1万年は形式的な教えだけが残る末法の時代に至るというものである。

 @について、末法の世においても仏陀の教説は形式的には存在するとされているので間違い。
 Aについて、正しい。
 Bについて、末法思想にこのようなとらえ方は存在しない。
 Cについて、これは像法の時代の説明である。(3/21)


倫理模試の過去問をやってみよう(77)



(今回も「平安後期の仏教」についての問題にトライします)

問 仏と人々を媒介する存在には、官許を得て出家する官僧のほかにそれを得ていない私度僧と呼ばれる人もいた。その代表的な一人である空也についての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 阿弥陀仏の名を唱えながら、野原に遺棄された死骸を火葬して歩き、市中で人々を教化して市聖と呼ばれた。
A 都の造営に駆り出されて難民となった人々を率い、東大寺大仏の建立など多くの社会事業を行って、菩薩と仰がれた。
B 山中で修行して得た力を駆使して様々な呪術を行ったと伝えられ、後に修験道の祖と仰がれた。
C 行き合う人々に念仏札を配りながら全国を旅して歩き、生活にかかわる一切の束縛を捨て去って捨聖と呼ばれた。

(2003年 センター試験)




正解は@です。

   比較的簡単な問題です。ミスをしないように気をつけてください。特に奈良時代の行基と平安時代の空也は混同しやすいので間違えないように。

@について、空也の説明であるので正しい。
Aについて、行基のことであるので間違い。
Bについて、役小角のことであるので間違い。
Cについて、鎌倉時代の一遍のことであるので間違い。(3/17)



  

倫理模試の過去問をやってみよう(76)



(今回も「平安仏教」についての問題にトライします)

問 下記の文章中の( A )に入れるのに最も適当なものを、次のそれぞれの@〜Cのうちから一つずつ選べ。

 仏教をさらに深く学ぶため唐に渡った空海は、密教の僧恵果に出会った。帰国した空海はそれを真言密教として体系化し、( A )と一体化することで即身成仏できると説いた。

@ 弥勒菩薩  A 法蔵菩薩  B釈迦如来  C 大日如来

(2010年 センター試験)




正解はCです。

 今回は、キーワードになるものを確実に覚えているかという簡単な問題をあえて選びました。過去、このような問題が出題されたことも頭に入れておいてください。

@について、弥勒菩薩とは釈迦入滅後、56億7千万年後に地上に現れ衆生を救済すると言われる未来仏とされているので間違い。
Aについて、法蔵菩薩とは阿弥陀仏が修行している頃の呼び名であり、48の請願をたてたと言われている。間違いである。
Bについて、釈迦如来とは一般的には釈迦が悟りを開いたあとの呼び名である。曹洞宗の本仏ともいわれるので間違いである。
Cについて、密教の本尊。密教においては、あらゆる仏・菩薩を包摂する存在であるので、これが正解である。(3/15)



  

倫理模試の過去問をやってみよう(75)



(今回は「平安仏教」についての問題にトライします)

問 比叡山に延暦寺を創建した最澄の生涯と思想にかかわる記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 弘法大師と呼ばれる。長安で密教を学び真言密教を体系化し、即身成仏を説く。讃岐に満濃池をつくり綜芸種智院を開いて庶民の教育にも力を注いだ。
A 遊行上人とよばれる。浄土の教えに深く帰依し諸国を遊行して念仏を唱え踊り念仏をしながら布教した。
B 伝教大師とよばれる。東国の法相宗徳一と論争し、法華経の一乗思想によって人間差別の考えを否定し、修行を積めば等しく仏となれると主張した。
C 市聖と呼ばれる。念仏を唱え、阿弥陀仏の慈悲による来世の救いを説き、諸国を遍歴し道を修繕し架橋などをして民衆を助け、教化につとめた。
(2014年 駿台模試)





Bが正解である

比較的簡単な問題である。最澄についても、最澄以外の僧について記した選択肢もひじょうに分かりやすいものである。

 @について、空海の生涯を示しているので間違い。
 Aについて、一遍の生涯を示しているので間違い。
 Bについて、正しい。
 Cについて、空也の生涯を示しているので間違い。(3/10)


倫理模試の過去問をやってみよう(74)



(今回も「日本の思想」についての問題にトライします)

問 神仏習合の説明として適当でないものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 神道と仏教が重なり合うことを意味し、それぞれの要素は変質しつつも消滅はしない。神社に神宮寺がおかれるなどはその例である。
A 神道と仏教が重なり合うことを意味し、神道または仏教いずれかが支配的に理解されることもある。本地垂迹説などはその例である。
B 神道と仏教が重なり合うことを意味し、神と仏が同体であるとみなされることもある。権現信仰などはその例である。
C 神道と仏教が重なり合うことを意味し、そのことで両者は一つの教えへと昇華される。近代の国家神道などはその例である。
(2009年センター試験)




Cが適当でないので正解である。

 日本では、奈良時代以降、神道と仏教の融合である神仏習合のありようがすすんでいった。平安末期には本地垂迹説を生み出し仏が本地、神が垂迹とみなされるようになった。しかし、元寇などをきっかけに逆に反本地垂迹説が鎌倉時代末期から登場してきた。ただ、1868年の神仏分離令までは、この神仏習合が日本人の基本的な宗教のあり方であったと言える。

 @について、神も解脱したいと願っているということから神宮寺が設けられたので正しい。
 Aについて、本地垂迹説は仏を反本地垂迹説は神を本地とするところから正しい。
 Bについて、権現信仰とは仏が衆生を救うために仮に神の姿となって現れたとする考え方であり両者は同一のものととらえているので正しい。
 Cについて、国家神道とは、神道を日本人の伝統的な生活倫理として神道を国教化したものであるので間違い。( / )


倫理模試の過去問をやってみよう(73)



(今回は「日本の思想」についての問題にトライします)

問 聖徳太子の世界観・人生観についての記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 人間は仏から見れば誰もが取るに足らない存在なのだから、相手の過ちを責めるよりも、自分自身にも非がなかったかを反省したほうがよい。
A 国家にとって宝とは、自らの分を守りながら千里先までを照らしだすような、仏の知を追い求める人のことである。
B この世界は、宇宙の真理そのものの現れである仏の身体と言葉と心からなっており、この仏と一体化することで自らも成仏できる。
C 人生の瞬間、瞬間が往生の時であり、そのためには一切を捨てて阿弥陀仏に救いを願わなければならない。
(2007年 駿台模試)





@が正解である

聖徳太子については、「十七条の憲法」の内容、彼の仏教に対する思いである「世間仮虚、唯仏是真」の意味などについては、しっかりと学習しておこう。

 @について、「十七条の憲法」には、和を尊ぶこと、各人が自らを凡夫と自覚すること、三宝(仏・法・僧)を敬うことを説いているので正しい。
 Aについて、これは最澄の『山家学生式』の言葉で「国宝とは何物ぞ、宝とは道心なり、道心ある人を名づけて国宝となす。……照千一隅、これすなわち国宝なり」と書かれているので間違い。
 Bについて、これは密教の思想であり、「大日如来」および「即身成仏」の説明であるので間違い。
 Cについて、鎌倉仏教の時宗の開祖である一遍の思想であるので間違い。(3/4)



倫理模試の過去問をやってみよう(72)



(今回から「日本の古代思想」についての問題にトライします)

問 『古事記』に描かれる神と世界の関係についての説明として最も適当なものを、 次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 世界は、唯一絶対の神が混沌から作り出したものであり、この神が世界に存在するすべてのもののあり方を定めている。
A 世界には多数の神々が存在し、その背後には唯一絶対の神が控えている。この神を祀ることで、世界は安定を保っている。
B 世界の中心には高天原があり、そこに暮らす神々が世界に存在するすべてのもののあり方を定めている。
C 世界は、唯一絶対の神を根拠とするのではなく、おのずから成った世界であり、そこに多数の神々が存在している。
(2013年 センター試験)




正解はCである。

 日本の古代の思想に関する問題である。日本は多神教でアニミズム信仰である。またキリスト教に見られるような原罪意識はなく、罪は外部からふりかかるものであり清めることによりぬぐえるものであると考えた。また清明心こそ当時の人々が大事であるとした人間のあり方である。
 @について、一神教で説明しているので明らかな間違いである。
 Aについて、多神教ではあるが、神の中で最高神が存在するとしている。日本では天照大神は最高神ではなく高天原の主宰者であるので間違いである。
 Bについて、神がすべてのことを決定するというような宿命論は日本には存在しないので間違いである。
 Cについて、「自ずからなる」という精神も古代日本の重要な特徴である。(3/1)


倫理模試の過去問をやってみよう(71)



(今回も「現代の思想」についての問題にトライします)

問  フッサールの思想の記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ 選べ。

@ 人間は自己の在り方を自由に選択するため、実存が本質に先立つ。
A 事物は知覚と独立には存在せず、存在するとは知覚されることである。
B 言語の限界を超える語り得ぬものについては、沈黙せねばならない。
C 自然的態度を変更し、判断中止を行うことが必要である。
(2012年 センター試験)




正解はCである。

 フッサールの現象学を正確に理解しておこう。それは、外部に存在する事物に関しては判断を中止し、意識に現れた現象を厳密に考察・記述しようとする学問である。
 @について、これは実存主義者サルトルの主張であるので間違いである。
 Aについて、経験論者であるバークリーの主張であるので間違いである。
 Bについて、これは分析哲学者のウィトゲンシュタインの主張であるので、間違いである。
 Cについて、外部にあるものは、当然自分の判断とは無関係に存在する物だと考えることはしないという態度なので、フッサールの主張であり正しい。(2/25)


倫理模試の過去問をやってみよう(70)



(今回も「現代の思想」についての問題にトライします)

問 近代合理主義が人間を抑圧するものであると主張した思想家としてフーコーおよびフランクフルト学派のアドルノとホルクハイマーがいる。それぞれの思想家の記述として最も適当なものを、次の@〜Dのうちからそれぞれ一ずつ選べ。

@ 近代合理主義が明らかにしたように、確かに人間は自由である。このことはしかし、神が存在しないとするならば、自分の行為を正当化するような価値や命令をどこにも見出せず、人間が孤独であることを示している。
A 近代合理主義をつうじて、理性は人間と自然をもとに手段と見なすようになった。しかもその際に、理性が何を目的としているのか、その目的自体は問われていない。理性による人間自身の支配は新たな野蛮への頽落である。
B 近代合理主義は自らの手で、その根底にあるヨーロッパの伝統的価値観を崩壊へと導いた。現実の世界で生きる人間の欲望を否定してきたこの価値観の崩壊はまた、現代が無意味と無目的の時代であることを意味する。
C 近代合理主義は人間の本質とヨーロッパの知の歴史に深く関わり、現代の技術時代に至ってその頂点を極めた。だがしかし、人間が技術と切り離されえない存在者であるにせよ、ここでは存在の真理が見失われている
D 近代合理主義は非理性的なものを理性的なものから区別した。理性的なものが知と権力の枠組みの中で人間を支配下に置き、近代主体という規格を強制する一方で、非理性的なものは狂気として社会から排除された。

(2011年 駿台直前模試)




フーコーについては、Dが正解であり、アドルノ・ホルクハイマーは、Aが正解である。

構造主義の視点を継承しながら独自の思想を展開したのがフーコーであり、彼の思想にはマイノリティーに対する温かいまなざしがあり、近代社会システムが絶対的なものではなく、歴史的に制約されたものにすぎないことを示そうとした。
また、アドルノとホルクハイマーは、フランクフルト学派の主要な思想家である。近代理性は合理的社会を築き上げたが、その理性が自然と人間を支配する道具となってしまったと主張する

 @について、サルトルの自由についてのとらえ方である。彼は「人間は自由の刑に処せられている」と主張した。
 Aについて、このように頽落した理性を彼らは道具的理性と呼んだ。
 Bについて、ニーチェのニヒリズムにもとづいた考え方である。当然ニーチェはこの状態からいかに脱却すべきかを説いたのである。
 Cについて、ハイデッガーの技術に関する記述。彼は、存在の真理を求めるなかで現代技術に対する批判も強めていった。
 Dについて、フーコーは『狂気の歴史』のなかで、近代社会において非理性的なものが狂気として位置づけられて社会から隔離されていく過程を明らかにした。(2/23)


倫理模試の過去問をやってみよう(69)



(今回も「現代の思想」についての問題にトライします)

問 未開社会の思考についてのレヴィ-ストロースの見解として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 未開社会の思考は象徴による思考であり、その神話的思考は文明人の思考よりも遅れたものとみなされがちである。しかし、両者の優劣を論じることはできず、それらは規則性を備えた一定の構造をもつという点では同じである。
A 未開社会の思考は象徴による思考であり、それが生みだした象形文字は、やがて英語などの近代語で用いられる文字へと発展していった。したがって、文明社会の思考様式も基本的には彼らのものと同じである。
B 未開社会の思考は象徴による思考であり、我々が比喩を使って出来事を表現するのに似ている。象徴も比喩も、あるものを別のもので表現するという点で同じであり、彼らの思考様式は基本的に我々のものと同じである。
C 未開社会の思考は象徴による思考であり、脳の視覚野の発達を促した。他方、論理的思考を中心とする我々の科学的思考は脳の聴覚野の発達を促した。両者の違いは発達部分の違いにすぎず、脳の構造は同じである。
(2000年 センター試験)




正解は@である。

 構造主義の代表的な思想家がレヴィ-ストロースである。2009年まで存命した。近代の思想家の代表者の一人である。文化相対主義の立場に立ち、ややもすれば西洋は他の地域よりすぐれているとする考え方に対して、文化に優劣はないと主張した。頻出の思想家であるので、しっかりと学習しておこう。
 @について、未開社会の思考は文明人に対して遅れていないとする点、またその背後には一定の構造があるという点はまさに彼の主張であるので正しい。
 Aについて、文明社会の文字の起源が未開社会の象形文字を起源としているからという点をとらえて、思考様式が同じだとするのは論理の飛躍であるので適当でない。
 Bについて、象徴と比喩を同列に並べ、それゆえ思考様式が同じであるとするのは彼の言説ではないので間違い。
 Cについて、彼は生物学的な脳の発達や生物学的な脳の構造などに対して構造主義を主張しているのではないので間違いである。(2/17)


倫理模試の過去問をやってみよう(68)



(今回も「現代の思想」についての問題にトライします)

問 自我形成に関するフロイトの学説についての記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 人間の心の奥底に潜む集合的無意識が、意識をあやつって人を理由のない不安に陥れるが、それを意識化して自覚的にコントロールする超自我の形成を通じて自我の安定が保たれる。
A 自我とは、欲求を満足させることのみを目指す本能的な無意識の働きを抑制して現実原則にも適応させるように調整を行うことで、社会的に健全な振る舞いを人にさせる働きをする。
B 母親の愛情を独り占めして父親を排除しようとするエディプス=コンプレックスを幼少期にもったことがある人は、ひずんだ衝動により青年期の正常な自我発展が妨げられることが多い。
C 心の奥底にある無意識の性衝動であるリビドーは意志による制御が難しく、衝動的・短絡的な怒りや強い衝動に人を駆り立てるため、高度な文化的・精神的活動を妨げるものである。
(2012年 駿台模試)




Aが正解である

フロイトについては、青年心理の分野における防衛機制とともに、無意識の領域を研究し、精神分析学を設立したことも学習しておこう。基本的なキーワードだけでなく、その内容もしっかりおさえておきたい。彼は、心を3つの領域に分けた。性衝動を中心とした本能的なものをエス(イド)と呼び、それらを抑え込むものを超自我と呼び、両者を調整して現実的原則を打ち立てるものが自我であるとした。

 @について、超自我とは幼少期に親のしつけなどにより形成される良心のことである。また、集合的無意識とは、フロイトではなくユングが提唱した人類共通の普遍的イメージを指すものであるので、これは間違い。
 Aについて、フロイトの提唱していることなので正しい。
 Bについて、フロイトはエディプスコンプレックスは成長とともに消えていくが、性格の形成に影響を与えることもあるという。しかし、青年期の正常な自我発展を妨げるとは言っていない。
 Cについて、リビドーがもたらす心の緊張状態から自我を守るための仕組みが防衛機制である。その一つに昇華があり、人間を高度な文化的・精神的活動にむけさせると言っているので誤り。(2/10)


倫理模試の過去問をやってみよう(67)



(今回も「現代の思想」についての問題にトライします)

問 現代のヒューマニストのうちガンジーとシュヴァイツァーの思想として最も適当なものを、次の@〜Eのうちからそれぞれ一つずつ選べ。

@ 人間は生への盲目的意志に駆りたてられて、苦しみに満ちた人生を余儀なくされると考えた。
A キリスト教の精神に基づいて未開の地での医療活動に従事したが、生物の生きようとする意思に感動して、それを倫理の基本に置いた。
B 人間は内から湧き上がる生命の躍動により創造的に進化するのであって、あらかじめ決められた目標のようなものはないと考えた。
C 牧師として被差別者の立場を擁護し、暴力的な手段によらない人権の獲得を訴えた。
D 宗教的な心情に基づいてすべての生命に対する傷害を忌避し、清浄な生活を送ることで真理を把握することが可能であると考えた。
E 一切の暴力を否定し、神に対する信仰でつながった宗教的な共同体を理想とした
(2008年 駿台模試)




ガンジーがDでシュヴァイツァーがAである

現代のヒューマニストとしては、ガンジーやシュヴァイツァーはもちろんのこと、キング牧師・マザーテレサなどの人々について頭に入れておこう。彼ら彼女らの思想とともにその生涯についてもおさえておく必要がある。

 @について、ショウペンハウアーの思想であるので間違い。
 Aについて、いわゆるこれがシュヴァイツァーの言う「生命への畏敬」である。
 Bについて、これはベルグソンの思想であるので間違い。
 Cについて、アメリカのキング牧師のことであるので間違い。
 Dについて、ガンジーのアヒンサー・ブラフマチャリャー・サチャーグラハのことである。
 Eについて、ロシアの文学者トルストイの思想であるので間違い。(2/8)


倫理模試の過去問をやってみよう(66)



(今回も「現代の思想」についての問題にトライします)

問 社会的・経済的格差に関して、ロールズの思想についての説明として正しいものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 格差が許されるのは、それが公正な競争によって生じ、かつ、最も恵まれない人々の生活の改善につながる場合に限られると主張した。
A 資本主義においては大きな格差が生じることは避けられないと考え、能力に応じて働き、必要に応じて富を受け取る社会を目指すべきだと考えた。
B 格差の是正には、生きる環境や能力が異なる人々に同じ財を配分するのではなく、基本的な潜在能力の平等を保障することが必要だと考えた。
C 人々の間に大きな経済的格差が生じたのは、文明社会で財産の私有が始まり、人間が堕落した結果だと考え、「自然に帰れ」と唱えた。
(2011年 センター試験)




@が正解である

 いたって簡単な問題である。ロールズは頻出の分野である。「社会契約説」の方法論を活用して「原初状態」を想定して理論家した。正義の二原理を打ち出した。それらの内容をしっかりと理解しておこう。
@について、まさにロールズの主張する、正義の原理である。
Aについて、これは、社会主義思想の説明であるので間違い。
Bについて、これは、センの主張であるので間違い。
Cについて、これは、ルソーの主張であるので間違い。(2/5)


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