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倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(46)



(今回は「ドイツ理想主義」についての問題にトライします)

問 ヘーゲルの弁証法的思考に即した記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ あらゆる物質が消滅を免れないように、いかなる現象も一時的なものにすぎず、進歩というものは錯覚である。
A つぼみは花となることでかつての自身の姿を否定するが、同時にそれまでのあり方を内部に保存してもいる。
B 長男と次男が遺産相続をめぐって争ったが、折半するということで妥協が成立し、両者間の対立は止揚された。
C イエスが神であると同時に人間であるということは論理的に矛盾しているので、そのようなことはありえない。
(2012年 駿台実践問題)




Aが正解である

弁証法とは、すべての事物のうちに貫徹している変化と発展の論理のことである。植物や動物が成長するのも、社会が発展するのも内部に必然的な法則があるからだとする。一般的には(正)―(反)→ (アウフヘーベン)→(合)で説明されることが多い。
@について、ヘーゲルの弁証法は、(正)―(反)→ (アウフヘーベン)→(合)という過程をとおして永遠に進歩していくものだととらえているので、進歩は錯覚であるという見解は間違いである。
Aについて、『精神現象学』の中で語られていることで正しい。
Bについて、止揚という言葉の使い方がおかしい。止揚とは単に異なるものの対立の調整や妥協をはかることではない。両者を包含したような高次な段階に進むことを意味するので間違いである。
Cについて、これは矛盾していることを排除している。ヘーゲルは事物が矛盾した部分を持つことにより止揚されて高次の段階に達するのだと述べているので間違いである。(2/22)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(45)



(今回は「ドイツ理想主義」についての問題にトライします)

問 純粋な責務の道徳論はカントの立場であるが、これを形式的であると批判して、倫理の具体的内容を重視したのがヘーゲルである。ヘーゲルによるカント批判として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。 

@ 責務を担う主体は、この私自身であるから、道徳は自己の実存に関わる真理の次元で具体的に考える必要がある。
A 責務を果たす手段は、物質的なものであるから、道徳の具体的内容を精神のあり方から観念的に考えてはならない。
B 責務を担う場面は、人間関係や社会制度と深く関わっているから、これらを通して道徳を具体化せねばならない。
C 責務を果たす目的は、人々の幸福の具体的な増大にあるから、道徳的に重視すべきは行為の動機よりも結果である。
(2008年 センター試験)




   正解はBです。

  ヘーゲルについて基本的なことをまとめておきましょう。まず、彼の思想はカントと異なり、自由というような道徳を現実の人倫という場で具体的に論じました。また、精神が歴史を動かすとしてそれを世界精神と呼んだことや物事の発展のあり方として弁証法を提唱したことなどがあげられます。

@について、これは実存主義哲学者であるキルケゴールに見られる考え方である。彼は普遍的真理ではなく、あくまで主体的真理を追求した。
Aについて、後半は間違っているとは言えないが、物質的なものとして考えるのは唯物論の見解であり、マルクスなどの社会主義者のあり方に近いものである。
Bについて、人間の道徳は人倫という場面で考えなければならないというのが彼の考え方である。
Cについて、社会全体の幸福と個人の幸福について考えたり、結果主義の考え方に立つのは功利主義の立場である。(2/22)



  

倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(44)



(今回は「ドイツ理想主義」についての問題にトライします)

問 道徳の問題を積極的に展開した思想家にカントがいる。カントの道徳論についての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 社会の基本的なルールを守らなければならないのは、社会の大多数の人間と同様な行動をとることが普遍的な立法だからであり、周囲と異なる行動をとることは定言命法に反するからである。
A 他人の人格を無条件に尊重しなければならないのは、今は無関係な他人であっても、将来、自分自身が何か社会的に有利になる上で手助けとなってくれる可能性があるからである。
B ウソをついてはいけないのは、ウソも方便という行動方針が万人の規則になりえないからであり、そのような行為はたとえいかなる事情があるにせよ行うべきではないと理性が自らに命じるからである。
C 他人の物を盗んではならないのは、それによって社会的な非難や刑罰を受け、盗みによって生じる利益よりももっと大きい損失をこうむることが理性的な判断によって予想できるからである。
(2007 駿台模試)




正解はBであり、これが正しい。

@について、「社会の大多数の人間と同様な行動をとる」ことが普遍的立法でもないし、「周囲と同じ行動をとる」ことが実践理性の命令でもない。カントの道徳法則は普遍的な命令であるので、社会の大多数の人間がどのような行動をとろうと、それとは無縁なものであるのだ。
Aについて、他人の人格を無条件に尊重しなければならないのは、相手がいつか自分の手助けになってくれる可能性があるからではない。彼は他者の人格は無条件に尊重しなければならないとし、目的であり、手段として扱ってはならないと主張している。
Bについて、カントにとって、ある行動を行う時の行動方針が自分だけにしか通用しないものであってはならない。万人にとって普遍的なものでなければならない。ウソも方便というあり方は、決して普遍的なものとは言えない。また、彼の道徳法則は無条件の定言命法でなければならない。これらを満たしているので正解である。
Cについて、行為の結果から考えるのはカントの立場ではない。この例文は明らかにその行為がもたらす結果でもって、その行為の道徳性を判断しているので間違いである。(2/2)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(43)



(今回は「ドイツ理想主義」についての問題にトライします)

問 カントの思想に関する記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ いくら主観的に善を目指したとしても、実際の行為でそれに見合った結果を生み出さないかぎり道徳的と言うことはできない。
A 道徳的行為は、自分と同様に理性をもった他の存在を、自己の利益の観点からのみ扱うのではなく、同時にその意志を尊重するときに成り立つ。
B たんなる主観的な善悪を超えて、現存する共同体で受け入れられている人倫にのっとって行為することこそが真に道徳的態度である。
C 与えられた状況において具体的な解決策を見出すことに理性の真の意義があるので、道徳の問題について一般原則は立てられない。

(2008年 駿台直前模試)




Aが正解である

カントの思想は難解な部分もあるが、教科書を何回も読んで理解するよう努めよう。

 @について、結果によって行為の善悪を判断しようとする立場に彼は立たない。あくまでもその行為をどういう動機から行ったかで行為の善悪を判断すべきとする、動機主義の立場に立つので、これは間違いである。
 Aについて、彼の言葉に「汝の人格やほかのあらゆる人の人格のうちにある人間性を、いつも常に同時に目的として扱い、決して単に手段としてのみ扱わないように行為せよ」がある。まさにこのことを言いかえたものであり、正しい
 Bについて、ヘーゲルの立場を踏まえた選択肢である。カントの道徳に対する立場は主観的であることを問題にし、客観的立場も加味した人倫においてとらえるべきだとした。
 Cについて、プラグマティズムのデューイの立場を踏まえた選択肢である。カントの定言命法は、善といえる行為の一般的条件を定式化したものであるから、この選択肢とは正反対の立場であると言える。(1/26)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(42)



(今回は「ドイツ理想主義」についての問題にトライします)

問 「汝の意志の格率がつねに同時に普遍的な法則として妥当しうるように行為せよ」のカントの言葉にかなった判断の下し方として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 誰もがいつでもどこでも、守るつもりのない約束をしたら、約束そのものが成り立たなくなる。そんな約束はしないようにしよう。
A 睡眠をとらずにこれ以上仕事を続けると、倒れてしまいそうだ。生物学の普遍的な法則には従わなければならないから、睡眠をとることにしよう。
B まわりにいる人たちからひんしゅくを買うような行為は、私個人としては問題がないと思われるものであっても、行わないことにしよう。
C いかなる場合でも法律には従わなければならないから、罰をまぬがれることができるからといって法律を破るのはやめることにしよう。
(2005年 センター試験)




正解は@である。

 今から、カントの道徳法則などについて問うた問題を解いていこう。ポイントとしては、自由のとらえ方、動機主義、定言(仮言)命法、善意志、とは何かなどが挙げられる。
 @について、守るつもりのない約束はどんな時でもしないというのが汝の意志の格率にあたる。このことを誰もが行えば約束自体が成り立たなくなるという普遍的法則と合致するゆえにこれは正しい。
 Aについて、ここでいう普遍的法則とは生物学的なものをさすのではなく、道徳的格率を指しているのでこれは誤りである。
 Bについて、まわりにいる人たちからひんしゅくを買うような行為をしてもよいというような意志の格率は、すでに普遍的な法則としては妥当しないので、これは誤りである。
 Cについて、法律と罰則の関係で人間の意志にの格率を語ることは、このカントの言葉の主旨に適合するとは考えられないので間違いと判断できる。(1/12)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(41)



(今回は「ドイツ理想主義」についての問題にトライします)

問 人間の尊厳を自由な道徳的主体としての人格に求めたカントの思想として適当でないものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 真理とは主観と客観が一致することであり、人間の正しい認識は、主観が客観を構成することによって成立する。
A 人間は現象界にだけ属する存在であるので、神の領域である英知界については一切関与することができない。
B 道徳の世界には道徳法則が存在し、「汝なすべし」という内なる声に基づいてこの法則を遵守するところに自由が存在する。
C 世界平和を実現するためには国家同士が尊敬し合うことが必要であり、常備軍を撤廃して国際機関を設立すべきである。

(2013年 駿台直前模試)




Aが適当でないので正解である

Aは教科書では言及されていないところではあるが、@BCが正しいことから必然的にAが誤りだという答えが出せるのではないか。
 @について、正しい。一般的な認識論は、主観が客観を正確に映しとることで成立すると主張されるが、カントはそれを逆転させ、主観が客観を構成する、つまり「対象が認識に従う」と述べた。このことは前回の問題においても指摘したことである。
 Aについて、誤りである。今回、次のことを覚えておこう。カントは世界を現象界と英知界に分けた。現象界とは自然法則、自然因果性が妥当する世界であり、英知界とは知覚でとらえられない理性のみによってとらえられる世界である。人間は、自然法則に従わざるをえないから現象界に属すると言えるが、自らの意志で行動できることから英知界にも属する存在であるとした。
 Bについて、正しい。カントの立場では、自由とは好き勝手に振る舞うことではなく道徳的自由のことであり、道徳的義務を自律的に守るところに自由は存在するものだとした。
 Cについて、正しい。カントの著作『永久平和のために』の中における主張である。カントの永久平和論の立場を示したものである。(1/4)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(40)



(今回は「ドイツ理想主義」についての問題にトライします)

問 カントの批判哲学についての記述として正しいものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 合理論と経験論の一面性を乗り越えるべく、両者の立場を総合して、人間が物自体を理性によって認識できると論じた。
A ヒュームの著作に影響を受け、自然科学の客観性を疑問視して、その基礎にある因果関係が主観的な信念であると論じた。
B ロックの著作に影響を受け、人間の霊魂や神など、人間が経験できる範囲を超えた対象については、その存在を否定できると論じた。
C 認識が成立する条件を考察し、人間の認識は、認識の素材を受け取る能力と、その素材を整理し秩序づける能力の両者から生じると論じた。
(2013年 センター試験)




正解はCである。

 前回に続いてカントの認識論についての問題である。「認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従う」と述べたことを今一度間違えずに頭に入れておこう。また、感覚を受容する「感性」と概念を形成する「悟性」により認識が成り立つと言ったこともおさえておこう。
 @について、前半は正しいが、後半は間違いである。彼は物自体を認識することはできず、認識するのは主観のはたらきによって構成された対象であるとした。
 Aについて、因果関係が主観的な経験から生じた習慣にすぎないと述べたのはヒュームであり、カントはそれに「独断のまどろみ」を破られて、大陸合理論の形而上学的なあり方から新たな論理を展開したのである。
 Bについて、アンチノミー(二律背反)なものは理性による考察の対象とならないと主張したのであって、経験できる範囲を超えた対象については、その存在を否定できるとは主張していない。
 Cについて、正しい。前者が「感性」で後者が「悟性」である。(12/29)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(39)



(今回は「ドイツ理想主義」についての問題にトライします)

問 カントは理性の認識能力の検討・吟味を行った。カントの認識論についての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 認識の起源は経験には求められない。理性の有する生得的で明証的な原理にもとづき、必然的に演繹されることによってすべての妥当な認識が得られると考えた。
A 神や自由の問題など従来の形而上学では未解決とされた問題を、認識のコペルニクス的転回を達成することにより認識可能なものとして扱うことができると主張した。
B 因果律は客観的に実在するのではなく、習慣にもとづく主観的結合にすぎない。理性が事物の関係を認識しようとしても、蓋然的知識以上のものは得られないとした。
C 理性による認識能力には限界があり、その対象は経験の及ぶ現象の世界のみに限定される。それを超える物自体の世界の問題は、理論的には証明できないとされた。

(2006年 駿台直前模試)




Cが正解である

カントは旧来の経験論の立場と合理論の立場の融合をはかった。認識とは、経験から得た無秩序な素材を先天的なものが働いて再構成して成り立つとした。つまり、認識とは単なる対象の模写ではないとして「認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従う」と述べた。このことをコペルニクス的転回と彼は名付けた。また、神の存在、宇宙は有限か無限かなどのアンチノミー(二律背反)なものは、理性では答えられないとした。

 @について、この一文にあるような立場はまさにデカルトが主張したものである。
 Aについて、神の問題などアンチノミーなものは、理性では認識不可能なものであるとしたのがカントの立場である。
 Bについて、因果律の客観的実在を否定してのは、経験論の継承者であるヒュームである。カントは彼のこの考え方に「独断のまどろみ」から覚醒させられたと言っている。
 Cについて、カントはアンチノミーなことについてはこのように述べているのである。(12/24)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(38)



(今回は「社会契約説」についての問題にトライします)

問 社会契約説をとなえた思想家たちに共通する主張として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 政治社会や国家が成立する以前は、自由で平等な個人間の闘争状態が支配していた。
A 社会や政治の制度は、自由で平等な個人間で交わされる取り決めに由来するものと考えられる。
B 個人は自由で平等であり、各人の生得的な権利は絶対に譲り渡すことのできないものである。
C 政府が権力を濫用して、自由で平等な個人の信託に背いた場合には、国民は政府に抵抗することができる。
(2001年 センター試験)




正解はAである。

 社会契約思想の思想内容の共通点について問うた問題である。ホッブズ・ロック・ルソーの代表的3人の思想家の思想内容を各々対比して覚えておくことが必要である。まず、彼らが自然状態をどのようにとらえたか。そして、それを前提にしてどのような契約を結ぼうとしたか、また結ぶべきであるとしたか。そして、それによりつくりあげられた社会とはどのような特徴を持つものであるかなどである。
 @について、自然状態を「自由で平等な個人間の闘争状態」としているのは間違いである。ホッブズは「万人の万人に対する闘争状態」と述べたし、ロックは比較的自由で平等な状態であると述べた。
 Aについて、正しい。これこそが社会契約論の本質である。
 Bについて、たしかにロックはそのように主張しているが、ホッブズは自然権を絶対者に一旦譲渡すべきであると述べているから誤りである。
 Cについて、この抵抗権・革命権の考え方はロックが唱えたもので、ホッブズの思想の中には見い出すことができない。(12/21)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(37)



(今回は「経験論。合理論」についての問題にトライします)

問 ロックがその理論の出発点においた考えを説明した記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 国家や政府が存在しなくとも、人々は神の教えに従い、他人の所有権の侵害などの犯罪は存在しない。
A その共同体に生まれた者は、神の与えた運命としてそれを受け入れ、共同体から離れることはできない。
B 自ら働き収穫した物は神の恵みであり、それは個人のものではなく共同体全体の共有財産である。
C 人間は神の被造物であり、この共同体の成員は皆が自由で平等であることが、神によって保障されている。

(2008年 駿台直前模試)




Cが正解である

社会契約説の分野は、政経とも重なり3年生においても学習します。ホッブズ・ロック・ルソーの3人が代表的な思想家です。3人の思想の違いをおさえておきましょう。ここでは自然状態をどのようにとらえたかたを聞いています。ロックの自然状態のとらえ方を教科書では「各人が理性の声である自然法の支配にしたがい、自由・平和・平和が比較的よく保たれている状態のことである。また、各人は自然権として、自然法が保障する個人の生命・自由・財産の所有の権利を持つ」と説明しています。

 @について、国家や政府が存在しなくとも、一定の平和な状態が成立するというのがロックの自然状態のとらえ方であるが、そこでも所有権の侵害などの犯罪は存在しうるというのがロックの主張である。
 Aについて、社会契約は、自由な個人が互いに契約をかわし政府をつくるというのがロックの考え方で、その契約が気に入らない者は当然その社会に参加しなくともよいのである。
 Bについて、ロックは自らの身体やその自由は自然権であるとし、その身体の労働によって生み出されるものは、当然その人の所有物であるとした。
 Cについて、ロックの家は敬虔な清教徒の家庭であることから人間は神の被造物だということが出てきても別に誤りだとは考えないこと。人間には自由・平等の自然権が天から与えられているというのは彼の主張である。ただこれは完全なものではないと考えたのは前述のとおりである。(12/14)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(36)



(今回は「経験論。合理論」についての問題にトライします)

問  17世紀後半のオランダで、キリスト教やユダヤ教の正統派の立場から異端とみなされたスピノザの思想の説明として正しいものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。 

@ 無限実体である神から区別された有限実体は、思惟を属性とする精神と、空間的な広がりである延長を属性とする物体から成り、精神と物体は互いに独立に実在する。
A 事物の究極的要素は、非物体的で精神的な実体としてのモナド(単子)であり、神はあらかじめ、無数のモナドの間に調和的秩序が存在するように定めている。
B 神は人間に自己の生き方を自由に選択できる能力を与えたのであり、人間は自由意志によって、動物に堕落することも、神との合一にまで自己を高めることもできる。
C 自然は無限で唯一の実体である神のあらわれであり、人間の最高の喜びは、神によって必然的に定められたものである事物を、永遠の相のもとに認識することにある。(2011年センター試験)




 正解はCである。

 イギリス経験論の継承者としてロック・バークリー・ヒュームがおり、大陸合理論を引き継いだ人としてスピノザ・ライプニッツが挙げられる。彼らの思想を詳しく聞く問題は少ないが、その思想の大筋とキーワードはおさえておこう。
 @について、大陸合理論の創始者であるデカルトの思想そのものである。
Aについて、彼と同じ大陸合理論の継承者ではあるが、ライプニッツの思想について述べたものである。
 Bについて、これはピコ=デラ=ミランドラの思想について述べたものである。
 Cについて、「神即自然」「永遠の相の下に」などは、スピノザに関する代表的なキーワードである。(12/8)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(35)



(今回は「経験論。合理論」についての問題にトライします)

問 ヒュームが共感を論じた次の文章を読み、そこから導き出される見解として最も適当なものを、下の@〜Cのうちから一つ選べ。

私たちは、自分とは疎遠な人よりも自分に近い人に強く共感するし、見知らぬ人より知り合いに、外国人より同国人に強く共感する。………だが一方で、人や物事に対する私たちの状況は、絶えず変化している。だから、今は疎遠な間柄の人でも、少し時間が経てば、親しい知人になるかもしれない。そのうえ、それぞれの人が、他の人に対して独自の位置を占めている。だから、もしそれぞれが自分の特殊な見方に映るままに他の人の性格や人物をとらえるなら、私たちは筋の通った会話すらできないだろう。それゆえ、このような絶えざる矛盾を防ぎ、より安定した判断に達するために、私たちは何らかの不動で一般的な観点を定める。そして、物事を考える場合にはいつも、自分がおかれた現状から離れて、この観点に自分をおくのである。(ヒューム『人間本性論』)

@ 私たちは、見知らぬ国で貧困に苦しむ者には、身近なところで貧困に苦しむ者ほどには共感できない。だが、自分の見方が状況次第で変化するという事実を肯定すれば、見知らぬ者の大切さを認めることができる。
A 私たちは、身近なところで貧困に苦しむ者と比べて、見知らぬ国で貧困に苦しむ者には共感できない。だが、状況が変化して親しい知人になれば、共感は容易になり、貧困について偏見を捨てて論じ合おうとする。
B 私たちは、見知らぬ国で貧困に苦しむ者よりも、身近なところで貧困に苦しむ者に強く共感する。だが、貧困について論じる際には、共感の偏りに左右されない視点に立って意思の疎通をはかろうとする。
C 私たちは、身近なところで貧困に苦しむ者については、共感しすぎてしまう。だが、遠く離れた見知らぬ国で貧困に苦しむ者については、自分たちがおかれた現状を離れて、冷静に論じることができる。
(2012年センター試験)




正解はBである。

 思想家の著書を読ませて、それと同じ見解のものを選ばせる問題で、近年では必ずと言っていいほど、1〜2題出題されるものである。文章をしつかりと読んで、正確に文意を把握する必要がある。「自分がおかれた現状から一歩離れて、不動・一般的観点から判断することが必要である」と述べている。
@について、疎遠な人が身近になるかもしれないから、今は見知らぬひとでも大切にするということは、不動・一般的観点とは言えない。
Aについて、疎遠な人が身近になれば、共感は容易になるからというものも不動・一般的観点とは言えない。
Bについて、共感の偏りに左右されない視点に立ってとはまさに不動・一般的観点と言える。
Cについて、遠く離れた見知らぬ国で貧困に苦しむ者については、自分たちがおかれた現状を離れて、冷静に論じることができるというのも、不動・一般的観点とは言えない。(11/30)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(34)



(今回は「デカルト」についての問題にトライします)

問 デカルトの考え方に関する説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 運命は人間の活動の半分を支配するが、残りの半分は人間の自由意志の活動に任されている。河川が氾濫を起こしても人間はそれに備えることができるように、運命に対しても抗することが可能である。
A 延長を本質とする物体は、機械的に運動するが、思惟を本質とする人間の精神には自発性が認められる。物体に自由はないが、人間には自由があるのだから、高邁の精神によって肉体的な情念を抑えることができる。
B 人間は霊と肉の二元論でとらえることができる。生まれながらの自然的な人間は精神と肉体から成り、精神が人間の本来のものであり、肉体は非本質的なものであるから霊は義に従おうとしても、肉がこれに背いてしまう。
C 理性の活動を完成することが人間の最高の幸福であり、これが最高善に他ならない。欲望や感情に惑わされずに、人間の固有の優れた働きにもとづく魂の活動、すなわち理性にもとづく観想的生活が求められるべきである。
(2007年 駿台模試)



Aが正解である

 教科書に明記のないことを記した選択肢もあるが、デカルトについて教科書に書かれていることを正確に頭に入れておけば答えは導けるはずである。物体を延長として精神と独立したものとしてとらえたこと、また情念を抑える「高邁の精神」など正しく整理しておこう。

 @について、ほとんどの人が分からなかったであろうが、これはマキャベリの考え方である。正しいか間違いか判断できなければ、とりあえず候補として残して次の選択肢に移ろう。
 Aについて、物心二元論の立場に立って精神と物体は全く独立したものととらえた。そして精神は広がりを持たないが、物体は広がりを持つことからこれを延長と呼んだ。ただ人間は脳の中で精神と肉体は結合しているとする。それゆえ、肉体により生起される情念が精神に影響を与える。「高邁の精神」が情念を統制するものとなるのである。
 Bについて、これはパウロの主張である。彼も霊と肉体の二元論でとらえるが、いくら霊がよりよくあろうとしても、肉体がそれをさせないとした。キリスト教への信仰もここに始まると言えるのである。
 Cについて、最高善が理性の活動の完成、観想的生活を求めるということから、アリストテレスの考え方であることがわかる。(11/24)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(33)



(今回は「ベーコン」についての問題にトライします)

問 次のア〜工はベーコンが「イドラ」と呼んで批判した様々な先入見についての記述である。その正誤の組合せとして正しいものを、下の@〜Gのうちから一つ選べ。

ア 種族のイドラは、人間相互の交わりや社会生活から生じる。
イ 劇場のイドラは、伝統や権威を鵜呑みにすることから生じる。
ウ 洞窟のイドラは、人間に共通する自然的な制約から生じる。
工 市場のイドラは、各人が各様にもっている経験や知識から生じる。

@ ア 正  イ 正  ウ 誤  工 正
A ア 正  イ 正  ウ 誤  工 誤
B ア 正  イ 誤  ウ 正  工 正
C ア 正  イ 誤  ウ 正  工 誤
D ア 誤  イ 正  ウ 誤  工 正
E ア 誤  イ 正  ウ 誤  工 誤
F ア 誤  イ 誤  ウ 正  工 正
G ア 誤  イ 誤  ウ 正  工 誤
(2013年 センター試験)




Eが正解である

 基本的にア〜エの四つの選択肢のすべてについて正誤が分かっていないと正解を導くのは困難であるので、四者択一より、より正確な知識を必要とする問題である。ただ、問題の中身は、ベーコンの四つ「イドラ」についてであり、ベーコンにとっては最も基本的な問いであるので、難易度としては簡単な部類に入ると言える。四つの「イドラ」の意味の違いをもう一度しっかり確認しておこう。

アについて、「種族のイドラ」は、「人間に共通する自然的な制約から生じる。」ものであるから誤り。
イについて、これは正しい。
ウについて、「洞窟のイドラ」は、「各人が各様にもっている経験や知識から生じる。」ものであるから誤り。
エについて、「市場のイドラ」は、「人間相互の交わりや社会生活から生じる。」ものだから誤りである。(11/18)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(32)



(今回は「モラリスト」についての問題にトライします)

問 パスカルが人間をどのように捉えていたかについての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 人間は、天使でも鳥獣でもなく、偉大と悲惨の両極の間を揺れ動く、無とすべてとの中間者である。
A 人間は、「考える葦」として思考を通して宇宙を包み込む偉大な存在であり、自然の支配者である。
B 人間は、身体・精神・愛という三つの秩序をもち、弁証法的な思考の力によって自己の限界を超えることができる。
C 人間は、自己の悲惨さから神の愛によって救われるために、神から与えられた職業を全うする。
(2012年 センター試験)




   正解は@です。

代表的なモラリストといえば、モンテーニュとパスカルである。パスカルについては、「人間は考える葦である」「中間者」であるという言葉が有名である。また『パンセ』には「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら世界の歴史は変わっていた」などの一文もある。さらに、「三つの秩序」や「気晴らし」についてもキーワードとその内容を頭に入れておこう。

@について、正解である。
Aについて、「自然の支配者」というのは間違い。人間は宇宙と比べたら弱い存在だが考えることができるということで偉大だと述べているのである。
Bについて、「思考の力によって自己の限界を超えることができる」というのは間違い。神の愛によって可能になるのである。
Cについて、「神から与えられた職業を全うする」というのはカルヴァンの考え方であるので間違い。(11/10)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(31)



(今回は「モラリスト」についての問題にトライします)

問 悲惨な宗教戦争を体験したモンテーニュが強調したものとして最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 人間は偉大さと悲惨さ、天使と獣の間にゆれ動いている不安定な存在ではあるが、みずからの弱さや悲惨さを知るところに人間の偉大さがある。
A ソクラテスのごとく、自己吟味によって独断と偏見を脱して、傲慢さを捨て、他人の信仰や人間性に対して寛容でなくてはならない。
B 正しい知識や真実を得るには、私たちのうちにある先入観、偏見を排除する必要がある。
C 少しでも疑わしいと思われるものを、すべてしりぞけて、なお疑うことができないものを、すなわち考えている私が真理を探求する出発点である。
(2011年 駿台直前模試)




正解はAです。

 モンテーニュは、ソクラテスの真理に謙虚な姿勢・自己吟味を、また罪人たちへの無償の愛を説いたイエスの態度を尊敬している。「私は何を知るか」(ク・セ・ジュ)と述べ、人間の傲慢さを指摘し、他人の信仰や人間性に対する寛容を説いたのである。

@について、パスカルの考え方であるので間違い。
Aについて、正しい。
Bについて、ベーコンの考え方であるので間違い。
Cについて、デカルトの考え方であるので間違い。(11/2)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(30)



(今回は「宗教改革」についての問題にトライします)

問 近代における人間性の解放において宗教改革の果たした役割は大きい。宗教改革の思想についての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ ルターは、神によって正しいとされる信仰は、外的な善行によって達成されるものではなく、個人の魂がキリストの愛を信じるという信仰によってのみ達成されると考えた。
A ルターは、神と人間は聖書によってのみ結ばれるという聖書中心主義を説き、司祭の権威も世襲にではなく、聖書を最も深く理解している点に求め、キリスト教会制度の意義を確認した。
B カルヴァンによれば、誰が救われ、誰が救われないかを決定するのは神である。したがって、人はこの神の絶対的な力を悟り、救われる者の中に入れるようひたすら勤労に励むべきである。
C カルヴァンは、自分の仕事は神から召された任務であると信じ、これを天職として喜んで苦難にも耐えるべきであり、財産の蓄積や利潤を一切追い求めてはならないと説いた。
(2007年 駿台直前模試)




正解は@です。

 ルターの信仰義認論、聖書中心主義、万人司祭主義についてはその内容を正確に覚えておこう。また、カルヴァンの予定説については、救われている者と救われていない者はどのように決められているとしているのかの正しい理解が必要である。

@について、これはルターの説く信仰義認論であるので正しい。
Aについて、確かにルターは聖書中心主義を唱えたが、万人司祭主義の意味は、すべてのキリスト教信者は平等であり、基本的に司祭のような位階制度は認めない立場であるので間違い。
Bについて、カルヴァンの予定説は、救済されている者かされていない者かは、神によって決められているもので、人間の努力によって変えることはできないという主張であるので間違いである。
Cについて、労働による財産の蓄積は神からの恵みであり肯定されるとした。財産の蓄積や利潤を一切追い求めてはならないというのは間違い。(10/26)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(29)



(今回は「宗教改革」についての問題にトライします)

問 ルターの事績にかかわる内容として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ ジュネーブで教会制度の民主化や信徒の生活規律の徹底をはかることで理想のキリスト教都市の建設につくした。彼の説いた新しい職業倫理説は人々に働くことによる救いを与えた。
A 帝国追放の宣言を受けたが、ザクセン選定候の域内に保護され、聖書をドイツ語訳し、聖書を普及させることになった。
B 聖俗区別のない理想の教会をつくろうとして破門された。その後贖宥状の販売を非難して再度破門され、異端として火刑に処せられた。
C ギリシャ語を学んで聖書や教父の著作に校訂を加えて理解しやすくした。また、『痴愚神礼讃』を著しローマ教会の堕落を痛烈に批判した。
(2012年 駿台直前模試)




正解はAです。

ルターは、1521年にローマ教会から破門され追放令を宣言されたが、ザクセン選定侯の場内にかくまわれていた間にラテン語の聖書をドイツ語訳して、ドイツの人々に聖書をひろく広めることになった。信仰義認論、万人司祭主義、聖書中心主義などは彼の主張として頭に入れておこう。

@について、ジュネーブで教会の改革を行い、キリスト教都市の建設にあたったのはカルヴァンであるので間違い。
Aについて、正しい。これがルターのことである。
Bについて、火刑に処せられたことからこれはフスのことであると分かるので間違い。
Cについて、これはオランダのエラスムスに関することなので間違い。(10/20)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(28)



(今回も「ルネサンス」についての問題にトライします)

問 ルネサンス期の政治思想家マキャベリの『君主論』の内容について述べた文として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 君主は獅子のような豪胆さと、狐のようなずる賢い知恵を持つべきである。
A 君主は哲人であるべきであり、理性によって国政を導いていかなければならない。
B 君主は約束を守り、不正をなさず、信義を守るべきである。
C 君主といえども国法を尊重する義務があり、それに違反した君主は議会により追放される。
(2011年 駿台直前模試)




正解は@です。

ルネサンス期の政治思想家マキャベリは、政治を宗教や道徳から独立した現実的な権力として強調し、近代政治学を体系づけた。

@について、正しい。
Aについて、これはプラトンの説く哲人政治論である。
Bについて、君主は国家の統治という目的のためには、暴力や裏切りなどの反道徳的手段も許されるというのが、マキャベリの主張であるので間違い。
Cについて、これは立憲君主制の政治体制における考え方であり。名誉革命の後のイギリスでのあり方であるので間違い。(9/13)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(27)



(今回も「ルネサンス」についての問題にトライします)

問 ピコ=デラ=ミランドラは『人間の尊厳について』の中で自由意志について語っている。それについて最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 信仰によって魂は、神のみ言葉からきよく正しく、まことにされ、平和を愛して自由となり、すべての善に満ちて神の本当の子となる。
A 自然権とは、各人がその自然、すなわち自己の生命を維持するために、その欲するままに自己の力を用い得る自由である。
B 汝は最下級の被造物である禽獣に堕落することもありうるが、しかし汝の魂の決断によって、神的な高級なものに再生することもできるのである。
C 単なる欲望の衝動に従うことは奴隷状態であり、自ら課した法律に従うことが自由であるからだ。
(2008年 駿台模試)





正解はBです。

 ルネサンス期の哲学者として特筆されるのがピコ=デラ=ミランドラである。彼の思想は正確に頭に入れておこう。

 @について、ルターの『キリスト者の自由』における信仰義認論の考え方であるので間違い。
 Aについて、イギリスの経験論者また社会契約論の先駆者であるホッブズの考えかたであるので間違い。
 Bについて、正しい。
 Cについて、ルソーが『社会契約論』の中で述べていることであるので間違い。(10/7)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(26)



(今回は「ルネサンス」についての問題にトライします)

問 ルネサンスの人文主義者の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ ダンテは、十人の若い男女が十日間で一つずつ話をしていく筋立ての『デカメロン』を描いて、人間性の解放を具体的に表現した。
A マキャベリは、『君主論』のなかで、狡猾さと権力をもって統治する君主のあり方を伝統的道徳により矯正する政治論を展開した。
B エラスムスは、女神モーリアが人間の愚かさを語る『痴愚神礼讃』を描いて個性を失い平均化しつつあった当時の大衆を風刺した。
C ピコ=デラ=ミランドラは、「人間の尊厳について」のなかで、神の似像として造られた人間の自由意志に人間の尊厳を認めた。
(2014年 駿台模試)




正解はCです。

近年は芸術に関する問題もよく出題されている。世界史とも重複する分野であるが、ルネサンス期の芸術家とその作品またその作品の主な内容などはおさえておく必要がある。

@について、ダンテではなくてボッカチオについての記述である。ダンテが描いたのは『神曲』である。
Aについて、「伝統的道徳により矯正する」としたのが間違いである。彼は、君主は狡猾さと権力をもって統治するべきであると主張した。
Bについて、エラスムスは「個性を失い平均化しつつあった当時の大衆を風刺した」のではなくて、彼が風刺したのは支配者や聖職者であるので間違い。
Cについて、これは正しい。(10/5)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(25)



(今回も「中国の思想」についての問題にトライします)

問 朱子の学説についての記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

  @ 人間を含む天地万物を気による運動体と見なした上で、死物の条理である天理よりも、身近な日常の人倫を重視するよう説いた。
  A 心がゆるむのを警戒し常に覚醒させようとする敬の実践と、事物に内在する理を体験的に窮めてゆく実践とをともに重視するよう説いた。
  B 知ることと行うこととを一つのことと見なし、あらゆる場で心の理である良知を十分に発揮させることを重視するよう説いた。
  C 孝は万物を生成し秩序づける宇宙の根源であり、あらゆる人々に等しく内在する心情であるとし、その実践を何よりも重視するよう説いた。
  (2003年 センター試験)




   正解はAである。

 この問題は、中国の学説を取り入れた日本の思想家についても聞いている問題であることに気づく必要がある。朱子学・陽明学・古学・国学などについても学習しておこう。

@について、「死物の条理である天理」「人倫を重視」という言葉から、古学者である伊藤仁斎の思想であることが分かる。彼は朱子学を否定し、孔子・孟子の思想にかえることの必要性を説いたので間違い。
Aについて、窮理居敬は朱子の主張であるので正しい。
Bについて、「知ることと行うこととを一つ」「良知を十分に発揮」は王陽明の主張であるので間違い。
Cについて、孝を重視したのは陽明学を日本に広めた中江藤樹の主張なので間違い。(9/28)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(24)



(今回も「中国の思想」についての問題にトライします)

問 朱子学の「理気二元論」の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 絶対無差別の真理である「理」が、相互に依存し合って生滅する「気」の動きとして、人間の心のうちに知覚される。
A 人間の本源的な生命力である「気」の働きが、その時々の行動の原理である「理」を、絶え間なくつくりだしている。
B 人間を含む万物は「気」で構成されると同時に、その存在の根拠および道徳的規範が、「理」として賦与されている。
C 普遍的な天の「理」と、場所によって異なる地の「気」とを調和させるのが、天と地の間で生きる人間の役割である。
(2006年 センター試験)




正解はBです。

「理気二元論」とは天地万物の一切を理(=万物に内在し、そのものをそのものとしてあらしめている原理。個々の特殊なものに内在するが究極的には一なるものである)と気(=世界に充満し、無窮に運動を続けている流体状の物質でこれが凝固することによって物として成り立つ)の二つの要素によって成り立っているととらえるものである。

@について、「絶対無差別の真理」とは老荘思想の説く道のことであり、「気」とは生滅するものとはとらえていないことから間違い。
Aについて、その時々の行動の原理である「理」とは「理」を正しくとらえていないので間違い。
Bについて、「理」は人間にとっては道徳規範ともなりうるものなので正しい。
Cについて、場所によって異なる地の「気」というとらえ方は「気」を正しく表現していないので間違い。(9/22)



  

倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(23)



(今回も「中国の思想」についての問題にトライします)

問 老子の「無」に関する記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 「無」とは、万物の主宰者である天が則る永遠不変の原理であり、人間が欲を捨て、身を慎むことによって一体化することができる境地でもある。
A 「無」とは、万物を構成する五行の運行原理であり、自然の原理を理性的に探究することで部分的にではあれ明らかにされていくはずの真理である。
B 「無」とは、人間の認識を超越した存在であると同時に万物を生成する根源であり、人間が一切の知識や計らいを捨てて身を任せるべき道である。
C 「無」とは、相対的な人為的判断を超えた絶対無差別の境地であるが、人間が精神を集中し、物事の理を窮めることによって達すべき道である。。
(2010年 駿台直前模試)




正解はBです。

 老子は「大道廃れて仁義あり」と述べ、儒家の道徳が必要とされるに至ったのは、「道」が廃れたからであるとした。無為自然のあり方が善い生き方であると説いた。老子の説く「道」とは万物を生み出し成長させるものであり、万物がそこに帰っていくものであるとした。そして彼はこれを「無」とも呼んだのである。

@について、万物の主宰者である天という考えは儒家のものである。また、天が則る永遠不変の原理と人間が欲を捨て、身を慎むことによって一体化することができるというのは朱子学に特徴的なものである。ということでこれは間違い。
Aについて、万物を構成する五行という考え方は陰陽家のもの。また、自然の原理を理性的に探究する態度は、無為自然を説く老子の考え方とは異なるので間違い。
Bについて、「無」といえる道(タオ)の説明であり、また無為自然という彼のあり方を説明しているのでこれは正しい。(9/14)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(22)



(今回も「中国の思想」についての問題にトライします)

問 墨子が説いた思想の内容の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 他者への思いやりとまごころが理想的な愛であると説き、ひたすら他者を利して見返りを求めてはならないとした。
A 自他を区別しない無差別で平等な愛を説き、他者を愛し利をもたらすことによって自分にも利がもたらされるとした。
B 人間の本性とは利を求めて害を避けるものであると説き、賞罰によって法律を厳しく守らせなければならないとした。
C 人間は生まれつき悪を本性としていると説き、それを制御して道徳的人格を完成させるために、徳を身に付けなければならないとした。
(2010年 センター試験)




   正解はAである。

 諸子百家の中では儒家や道家についで多く問題として出題されるのが墨家や法家である。墨家は、自他無差別の愛と利益を互いにおよぼしかつ享受しあうことを意味する兼愛交利や非攻(防衛する場合は別として他国への侵略を行わないこと)また、ぜいたくをいましめたこと、実力主義で人材を登用したことなどを主張したことを頭に入れておこう。

@について、墨子の説く「兼愛交利」とは、無差別の愛であると同時に物質的利益をはかりあうことであり、「見返りを求めてはならない」というのは誤りである。
Aについて、これが「兼愛交利」の思想の中身であり正しい。
Bについて、これは韓非子や李斯の法家の主張である。
Cについて、これは礼治主義を唱えた儒家の荀子の主張である。(9/9)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(21)



(今回も「中国の思想」についての問題にトライします)

問 孟子は超自然的な存在である天の思想を展開した。孟子の考え方として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 人間は四つの完全な徳を身に付けて生まれてくるので、誰もが善行を積み重ねる可能性をもった大丈夫になると考えた。
A 人間は他人の不幸を見過ごせない惻隠の心が備わっているので、それを育てることにより平等の愛が実現されると考えた。
B 徳をもって民の幸福を目指すのが君主であり、徳を欠いて民に背いた君主を武力によって追放することも認められると考えた。
C 一人を殺せば死刑に処せられるが、多くの人を殺せば英雄とほめたたえられるという矛盾を含む侵略戦争は誤りだと考えた。
(2013年 駿台模試)




正解はBです。

源流思想の一つである中国の思想は頻出分野の一つである。その中でも孟子については、問題にできる材料も多いのでよく問われている人物である。四端、浩然の気、大丈夫、王道政治、五倫、易姓革命など、おさえておかなければならないことは多い。

@について、彼は人間は完全な徳を身に付けて生まれるのではなく、徳の芽生えである四端の心をもって生まれてくると主張しているので間違い。
Aについて、彼の説く五倫の道の主張から考えてみると、平等な愛などを説いたのではなく、社会秩序や家族道徳を重んじたことがわかるので、これは間違いである。
Bについて、禅定だけでなく放伐を認める易姓革命は彼が主張したものであり正しい。
Cについて、これは非攻を唱えた墨子の考え方であるので間違い。(9/1)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(20)



(今回は「中国の思想」についての問題にトライします)

問 儒家の祖である孔子の教えとして最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 人間は本来私利をむさぼり、他人を憎む性質をもっているから、礼によってその性質を人為的に矯正していく必要がある。
A 人間は生まれながらにして、惻隠の心、羞悪の心、辞譲の心、是非の心を持っている。この心を養い育てていくことによって四徳を実現することができる。
B 利他心の欠如が社会が混乱している原因であるから、自他を区別しない兼愛のもとにたがいに利益を与え合う博愛平等の社会をつくることが大切である。
C 自分の欲望やわがままをおさえて他人を思いやり、礼法や人としてふみ行うべき道にたちかえって仁を実践することが大切である。
(2011年 駿台直前模試)




正解はCです。

儒家の祖孔子の思想は、「克己」と「恕」「礼」の実践によって「仁」を実現するところに人の道があると説いている。

@について、荀子の性悪説の考え方を示す。
Aについて、孟子の性善説の考え方を示す。
Bについて、墨子の兼愛交の考え方を示す。
Cについて、正しい。(8/25)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(19)



(今回も「仏教」についての問題にトライします)

問 ブッダの没後に広まった大乗仏教についての記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 法とは、真理とその教えを意味する言葉であり、これを重視して自己の悟りの完成を求めたのが大乗仏教である。
A 空とは、否定と欠如を意味する言葉であり、これを重視して縁起の考え方を徹底したのが大乗仏教である。
B 律とは、戒律を意味する言葉であり、これを重視して五つの戒律を厳格に守るべきだとしたのが大乗仏教である。
C 識とは、知を意味する言葉であり、これを重視して事物の実体を取り戻すべきとしたのが大乗仏教である。
(2014年 駿台直前模試)




正解はAです。

小乗仏教と大乗仏教の違いをつかんでおくことは大事である。キーワードとしてあげれば、阿羅漢と菩薩、六波羅蜜、空、唯識論などが何を意味するかなどが頭に入っていなければならない。

@について、「自己の悟りの完成を求めたのが大乗仏教である」は誤りである。これは小乗仏教の立場である。
Aについて、正しい。竜樹は空思想を強調した。
Bについて、「戒律を厳格に守るべきだとしたのが大乗仏教である」というのは誤りである。戒律の遵守を主張したのは小乗仏教である。
Cについて、「事物の実体を取り戻すべきとしたのが大乗仏教」は誤り。空の思想は事物に実体はないとするし、唯識思想は一切の事物は人間の心が生み出したものだとしている。(8/17)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(18)



(今回も「仏教」についての問題にトライします)

問 ブッダの教えをまとめた四諦の各々についての説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 苦諦とは、自分の欲するままにならない苦は、努力で克服するのではなく、人生は苦であるとあきらめることで、心の平安を得られるということである。
A 集諦とは、あらゆる存在は、因と縁が集まって生ずるから、実体のない我に固執せず、他者に功徳を施すことで救いが得られるということである。
B 滅諦とは、減はもともと制するという意味であるが、欲望を無理に抑えようとせず、煩悩がおのずから滅することに任せよということである。
C 道諦とは、快楽にふけることや苦行に専念するという両極端に近づくことなく、正しい修行の道を実践することが肝要であるということである。
(2010年 センター試験)




   正解はCである。

 四諦説は、ブッダが悟りにおいて得たもののうちの中心的な教説である。仏教の考え方の重要なものであるのでしっかり頭に入れておこう。苦諦・集諦・滅諦・道諦からなるもので、その各々について理解しておこう。

@について、苦諦とは人生とは苦であるとあきらめるのではなく、苦であるというしっかりとした認識を持つということであるので間違い。
Aについて、集諦とはこの苦を集め起こす原因は煩悩にあるとすることなので間違い。
Bについて、滅諦とは、ゆえに苦を滅するためには、煩悩を滅せればよいということなので間違い。
Cについて、これが正しい。(8/10)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(17)



(今回は「仏教」についての問題にトライします)

問 ブッダは人生の苦しみを次のように述べている。文章中の[ A ]に入れるのに最も適当な言葉を、次の@〜Cのうちから一つ選べ。


 生まれることは苦しみであり、年老いることは苦しみである。病むことは苦しみであり、死ぬことは苦しみである。愛するものと別れるのは苦しみであり、怨み憎む者に合わねばならぬのも苦しみであり[ A ]のも苦しみであり、要するに現実を構成している物質的、精神的な要素のすべてに自己の心身がとらわれることから苦しみが生じるのである。(8/6 )


@ 働かないでは生きていけない。
A 明るく生きていけない。
B いやがられたり嫌われたりする。
C 欲しいものが手に入らない。
(2008年 駿台模試)





正解はCです。

四苦八苦とは、生・老・病・死および愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊常苦であり、このことを説明したのが、この文章である。 ゆえに、ここに入るのは、求不得苦のことであるので、欲しいものが手に入らないということであることがわかる。(8/6)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(16)



(今回は「古代インドの思想」についての問題にトライします)

問 古代インドのウパニシャッドで追求された、輪廻を脱した境地の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ アートマンの中に変化しない要素はないことを認識し、執着をすてて永遠性を獲得した境地。
A アートマンと宇宙的原理が同一であることを直観し、それによって永遠性を獲得した境地。
B アートマンが存在のよりどころとしている身体を不滅なものにすることによって、永遠性を獲得した境地。
C アートマンを創造した神の行為を認識し、神の慈愛による救済を通して、永遠牲を獲得した境地。
(2006年 センター試験)




   正解はAである。

 ウパニシャド哲学では、輪廻転生から解放され解脱するためには、「梵我一如」の境地にいたることが必要だと説く。梵我一如とは、宇宙の原理であるブラフマンと自己の本質であるアートマンが同一であるということである。アートマンを変わらない実体ととらえたところは仏教のとらえ方とは大きく異なる。

@について、 アートマンはウパニシャド哲学では、不変な実体を持つ我として考えられている。執着を捨てるということは仏教のとらえ方である。
Aについて、正しい。
Bについて、身体を不滅なものにするというような思想は、ウパニシャドにはない。
Cについて、「神の慈愛による救済」というような思想はウパニシャドにはない。
(7/27)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(15)



(今回も「キリスト教」についての問題にトライします)

問 キリスト教の三元徳を説いたアウグスティヌスの記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 初めはマニ教の信者であったが、キリスト教に回心して、カトリックの教義の確立に努め、原罪論、三位一体説、恩寵予定説などを説き、『新約聖書』にあるパウロの言葉から信仰・希望・愛をキリスト教の三元徳とした。
A アリストテレス哲学をキリスト教に応用してスコラ哲学を大成し、信仰と理性を区別し、理性に対する信仰の優位を説き、『新約聖書』にあるパウロの言葉から信仰・希望・愛をキリスト教の三元徳とした。
B イギリスのスコラ哲学者で、神学と哲学を峻別し、信仰と理性を統合させようとするスコラ哲学を崩壊させ、近代思想の端緒を開き『新約聖書』にあるパウロの言葉から信仰・希望・愛をキリスト教の三元徳とした。
C 「知らんがために信ずる」という言葉を残し、教会の信仰の絶対性を説き、信仰が知識の前提をなすとして、『新約聖書』にあるパウロの言葉から信仰・希望・愛をキリスト教の三元徳とした。

(Z会直前模試)




@が正解である

 キリスト教の発展をテーマとした問題である。この分野においては、4〜5世紀頃活躍した教父哲学者の代表的存在であるアウグスティヌスと13世紀に活躍したスコラ哲学の大成者と言われるトマス=アクィナスの二人は頻出の人物として頭に入れておこう。特に両者の思想の違い、著書などは覚えておく必要がある。また、ギリシャの四元徳とは知恵・勇気・節制・正義であるのに対し、キリスト教の三元徳とは、信仰・希望・愛であることもおさえておこう。

 Aについて、これは中世スコラ哲学の大成者であるトマス=アクィナスについて語った文章であるので間違いである。
 Bについて、これはオッカムのことである。仮にそれが分からなくてもアウグスティヌスは4〜5世紀に活躍した教父哲学者、スコラ哲学は9世紀ぐらいから登場したもの。時代が合わず明らかな間違いである。
 Cについて、アンセルムスのこと。それがわからなくても@とCを比較すれば、回心のこと三位一体・恩寵などから@のほうが正解の確率が高いと判断できるはずだ。「知らんがために信ずる」 という言葉はアンセルムスの言葉であるということを、できれば頭に入れておいてほしい。(7/20)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(14)



(今回も「キリスト教」についての問題にトライします)

問 イエスに関する記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

  @ 「悔い改めよ、神の国は近づいた」と宣言し、ヨルダン川のほとりで多くの人に洗礼を授け、神の教えを説いた。
A 形式的なユダヤ教の律法主義は神の愛に反するものだとしてユダヤ教を批判し、律法をすべて廃止するように主張した。
B 自分の敵も愛し、また過ちを犯した人に対しても悔い改めれば何度でも赦すことが神の愛に応えることだと説いた。
C 十字架上の刑死後三日目に復活し、自分の死は人類の罪をあがなう贖罪の行いであったことを弟子たちに告げた。

(2013年 駿台模試)



Bが正解である

 各々の選択肢は、その文章の内容がすべてが間違いであるとは限らない。ほんの1か所だけ誤りであり、あとはすべて正しいこともある。たとえば、それに関わる正しいキーワードを使っているが、その解釈が違ったりしている場合もある。つまり、違っているのは、ほんの一部の場合もあるので、早合点せず、すべてをじっくり読んで正しいか誤りかを判断しよう。

 @について、イエスはこの地で人々に洗礼を授けたのではなく、ヨハネより洗礼を受けキリストであるとの自覚を深めていったのである。
 Aについて、前半は正しいが、後半の「律法をすべて廃止するように主張した」は誤りである。彼は律法の内面化をとなえ、守るべきものは神への愛と隣人愛であると説いた。
 Cについて、イエスの死が人類の罪をあがなう贖罪の行いであったと主張したのは、パウロやアウグスティヌスなどイエス以降の人々である。(30 7/13)


倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(13)



(今回も「キリスト教」についての問題にトライします)

問 イエスの直接の弟子ではないが、重要な役割を果たした人物にパウロがいる。彼についての記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 若いころは熱心なマニ教徒で、キリスト教徒を弾圧する側であった彼は、ローマで「取りて読め」というイエスの声を聞き、キリスト教に回心した。
A 父・子・聖霊は神の三つの位格であるとする三位一体説を確立し、イエスを神の子として位置づけた。
B 神の啓示を通して与えられる恩寵の光と、事物を認識する自然の光を区別しつつ調和させることにより、原始キリスト教の教義を体系化した。
C イエスが十字架上で犠牲になることによって人の罪は贖われ、人はイエスの福音を信じることによってのみ義とされ、救われると説いた。
(2014年 駿台直前模試)




正解はCです。

キリスト教の分野では、その起源となったユダヤ教、イエスの教えの内容と同時に、イエスの死後の原始キリスト教の中心人物となったペテロや異邦人への布教に尽力したパウロについてもしっかりと学習しておこう。

@について、これは最大の教父といわれたアウグスティヌスのことである。パウロも回心してキリスト教信者になったが、彼はもとはユダヤ教徒であった。
Aについて、三位一体説はアウグスティヌスの思想である。
Bについて、前半はトマス=アクィナスのことである。また彼は中世スコラ哲学の大成者である。
Cについて、これはパウロの説く「贖罪論」であり「信仰義認説」である。(7/6)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(12)



(今回も「キリスト教」についての問題にトライします)

問 罪についてのイエスの考え方の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ イエスは、神の意志に反する行為を実際に行ってしまう人間の傾向を罪とみなし、その罪からの救済が誰に起こるかは、人間を超えた神の意志によって予定されていると主張した。
A イエスは、たとえそれを実行せずとも、人間が心のなかで悪しき思いを抱くことそれ自体を罪とみなし、自らが罪人であることを自覚し、その罪をゆるす神の愛を信じるよう説いた。
B イエスは、原初の人間が自由意志を悪用して神に背いたことに由来する人間のあり方を罪と考え、自由意志を正しく用いて自己自身を高めることで、その罪から脱却できると説いた。
C イエスは、人間が神なしでも自力で生きていけると考えている傲慢を根源的な罪であると考え、その罪は、律法を厳格に遵守することでのみ、神から義とされて赦されると主張した。

(2012年センター試験)





正解はAである。

センター試験としては難のレベルの問題である。文章を丁寧に読んで、使われている語句についても注目しよう、もし、ここで使われるべきでないキーワードが出てきたら、その選択肢は誤りの可能性が高い。イエスの考え方、主張を教科書を再度丁寧に読み込んで自分のものとしてほしい。

@について、神の愛は無差別・平等な愛(アガペー)であるとイエスは述べている。また「救いが神により決められている」とする、予定説を主張したのはカルヴァンであるので間違いである。
Bについて、「自由意志を用いて自己自身を高めることで、罪から脱却できる」ということをイエスが説いたというのは誤り、彼が説いたことは、神の愛を信じ、神を愛し、隣人を愛することによって、人間はより高次の段階にいたるとしたのである。
Cについて、「律法を厳格に遵守することのみ」が違う。彼は律法のために人間があるのではない、人間のために律法があるとして、律法の内面化を主張したのである。(6/30)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(11)



(今回は「キリスト教」についての問題にトライします)

問 キリスト教の成立と発展に関わる人物の記述として適当でないものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ エレミアは、古代イスラエル国家が滅亡の危機にひんした時に現れ活動した預言者で、神との新しい契約を予告したとされる。彼の生涯と言葉を記した『エレミア記』は、旧約聖書三大預言書の一つとされる。
A ヨハネは、終末がせまりメシアの出現が近いことを告げた預言者で、人々に悔い改めを求め、イエスにも洗礼を施したが、ユダヤ王によって処刑された。
B 神は、アブラハムの信仰を試そうと一人息子のイサクを生けにえに差しだすよう要求する。それに応えようとしたアブラハムを神が止めて、彼の信仰の堅さをほめたたえたことから、信仰の父とされている。
C ペテロは、はじめ熱烈なユダヤ教徒であったが、後にイエスの教えに回心して、イエスの十字架上の死は人間が犯した罪の贖罪であると説き、古代ギリシャやローマの異邦人にその教えを伝道し、ローマで殉教したとされる。
(2010年 センター試験)




正解はCです。

 エレミア・ヨハネ・アブラハムなどについては、教科書で触れても数行程度であるので一見難しい問題だと思いがちであるが、Cについては、ユダヤ教徒からキリスト教に回心したこと、贖罪論を唱えたこと、さらに異邦人に伝道したことなどを総合すると、パウロのことであることはすぐに分かるはずである。パウロについては、教科書では半ページぐらいをさいて説明している、主要人物である。彼のことさえしっかりと頭に入っていれば、簡単に正解を導ける問題である。
@について、エレミアについての説明は正しい。イザヤ・エキゼルとともに三大預言者である。
Aについて、正しい。ヨハネがイエスに洗礼を行ったのである。
Bについて、詳しく知っている人は少ないかも知れないが、旧約聖書の中にある。資料集には掲載されている。
Cについて、パウロのことであるので適当でない。ペテロはイエスの最初の弟子でエルサレム教会設立の中心人物である。ローマで殉教したところは同じである。(6/22)



  

倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(10)



(今回も「ヘレニズムの思想」についての問題にトライします)

問 エピクロスが提唱した生活信条として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 感情を乱す原因を避けて隠れて生きることによってアタラクシアを求め、安らかに暮らす。
A 極端な感情を避けて適切に選択できるメソテースの獲得と保持を求めて暮らす。
B 美にあこがれるエロースの感情に突き動かされて、ひたすら美を求めて暮らす。
C 欲望を抑えていかなる感情にも心を動揺させることのないアパテイアを目指して暮らす。
(2009年 センター試験)




正解は@です。

ヘレニズム時代の思想であるストア派とエピクロス派についてはその違いを各々のキーワードとともに頭に入れておこう。

@は、正しい。
Aは、メソテースとは中庸のことで、これはアリストテレスが倫理的徳を身に付けるうえで重要なことであると主張したものであるので不適格。
Bは、イデアにあこがれるエロースについては、プラトンの言であるので間違い。
Cは、アパテイアは、ストア学派が理想とした境地であるので間違い。(6/16)



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倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(9)



(今回は「ヘレニズムの思想」についての問題にトライします)

問 ストア派のアパテイアの説明として正しいものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 自然に従って生きることで、魂が完全に理性的で調和したものとなり、欲望や快楽などの情念によって動かされない状態。
A 情念や欲望が理性の命令に聞き従うことで、魂の三部分間の葛藤(かっとう)や分裂が克服され、心が全体として理性によって制御された状態。
B 過剰な情念に満たされることと、情念に心が少しも動じないことの中庸として見いだされる、有徳な人間にふさわしい適度な情念をもった心の状態。
C 苦しみや悲しみなどが取り除かれて、心のうちに快楽が得られることによって、魂が浄化された平静な状態。
(2013年 センター試験)




正解は@です。

 アパテイアとは、魂をかく乱し自然本性に反するものである情念にとらわれることなく、心が平静で不動である状態をいう。

@は、正しい。
Aについて、前半はプラトンの魂の三つの部分についての主張に言及したものであるので間違いである。
Bは、中庸の大切さはアリストテレスが倫理的徳を身に付け実践するうえにおいて重要としたことであるので間違いである。
Cは、アパテイアによく似ているが、快楽が得られること、魂の浄化という言葉から、エピクロス派の主張したアタラクシアの説明であることが分かる。間違いである。(6/8)



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倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(8)



(今回も「ギリシャ哲学」についての問題にトライします)

問 我々は他者との関係のなかで生きていることに関連して、アリストテレスが述べた言葉として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。 

@ 自然に従って生きよ。
A 人間はポリス的動物である。
B 万物は流転する。
C 人間は万物の尺度である。
(2009年 センター試験)




   正解はAです。

   簡単な問題である。先人の残した代表的な言葉、その人の思想を端的に表した言葉などはしっかりと覚えておこう。

@は、ストア学派のあり方を表した言葉であるので間違い。ゼノンの主張であり、マルクス=アウレリウスが『自省録』の中などで使っている。
Aは、アリストテレスの言葉で正しい。
Bは、自然哲学者であるヘラクレイトスの言葉であるので間違い。
Cは、ソフィストのプロタゴラスの言葉であるので間違い。(6/1)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(7)



(今回も「ギリシャ哲学」についての問題にトライします)

問 プラトンのいう「愛(エロース)」の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 個々の美しいものや善いものを超えて、善美そのものを追い求めようとする情熱のことである。
A 異性をひたすら精神的にのみ愛し肉体的な結びつきは徹底的に排そうとする、清浄な情熱のことである。
B 精神的な価値観を共有する者に対して感じる友情のことであり、友のためには死をも辞さない心情のことである。
C 究極的な一者から人間に与えられた愛のことであり、究極的な一者に全面的に帰依する心情のことである。
(2005年 センター試験)




   正解は@である。

 愛にはいろいろなものがある。プラトンのいうイデアをあこがれそれを追い求めようとするエロース、キリスト教が説く無差別・無償で与えるアガペー、アリストテレスの言う相互応酬的な友愛(フィリア)、仏教の説く生きとし生ける物に与楽抜苦をほどこす慈悲である。

@ 正しい。
A いわゆるプラトニックラブの説明である。プラトンが語源ではあるが、エロース自体と直接関係してはいない。
B 前半は友愛(フィリア)であり、後半はアガペーに近いものであると考えられるので間違い。
C これはプロテイノスが説く新プラトン主義の考え方であるので間違い。(5/27)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(6)



(今回も「ギリシャ哲学」についての問題にトライします)

問 ソクラテスの「知行合一」の思想と同じような考え方を示す具体的な例として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ タバコを吸うことがやめられない人は、タバコが自らの身体や周りの人々に害悪を及ぼしていることを本当には理解していないのである。
A 生きていくために仕方なく盗みをはたらく人は、自らの労働で収入を得て、その収入の中で家計を保つ才覚に欠けているのである。
B 友人が傷つくことがわかっていて悪口を言う人は、相手を思いやる優しい気持ちを持ち合わせていないのである。
C まじめに勉強したり努力したりすることを嫌がる人は、その苦難を補って余りある報酬が、将来もたらされることを予期できないのである。
(2007年 駿台直前模試)




   正解は@です。

ソクラテスの「知徳合一」「知行合一」「福徳一致」は理解しづらい概念ではあるが、その中心には知についての彼独自の認識があることを押さえておこう。ここでは「知行合一」について具体例から選ばせる問題であるが、このタイプの具体例をあげた問題はセンター試験には結構多いので慣れておこう。

@について、ソクラテスはわかっているができないという考え方はとらない。もしできないとするなら、それはそのことについて本当の意味で知らない、理解していないからだという。タバコの悪が本当の意味で理解できていれば、人はタバコを吸うことはないと彼は言う。その意味でこれが正しい。
Aについて、家計に関する才覚とは関係なく、盗みという行為が悪いことだということが分かっていない。それゆえ盗みをやめることはないと思われるのでこれは間違いである。
Bについて、相手を思いやるという情緒の問題ではなく、友人をきずつけることが間違った行為であるという認識がない。そこに問題があるのでこれは間違いである。
Cについて、ソクラテスは金銭的なものや名誉などは魂を善くすることにはつながらないとしているので、これは間違いである。(5/20)




倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(5)



(今回も「ギリシャ哲学」についての問題にトライします)

問 ソフィストに関する記述として適当でないものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 謝礼金をとる職業的教師として、青年たちに弁論術や一般教養を教えた。
A 社会制度や法律の由来をノモスとピュシスの対比によって説明した。
B 相手との論争に打ち勝つことを目的とし、詭弁を用いるようになった。
C 原子が虚空の中を運動し結合することで万物が形成されると考えた。
(2007年 センター試験)




   正解はCである。

簡単な問題である。ソフィストとはどのような主張を行ったか、どのような活動をしたか押さえておこう。特にプロタゴラスは「人間は万物の尺度である」と言ったことはその意味とともに覚えておこう。
@ 正しい。
A 正しい。ノモスとは道徳や法のことであり、ピュシスとは自然のことである。
B 正しい。
C 自然哲学者デモクリトスのアトムの理論であるので間違い。(5/12)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(4)



(今回は「ギリシャ哲学」についての問題にトライします)

問 タレスに関する記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 世界は生成変化のうちにあり、静止しているものはないと考えた。
A 世界は根本的原理によって説明ができ、それは水であると考えた。
B 世界は不死なる魂と美しい数的秩序の調和のうちにあると考えた。
C 世界は土・水・火・空気の離合集散から成り立っていると考えた。
(2006年 センター試験)




   正解はAです。

  ギリシャの自然哲学者の主張について聞いた問題。基本的な簡単な問いである。このような問題を間違えることはできない。

@は、ヘラクレイトスの主張と思われるので間違い。
Aは、タレスの主張であるので正しい。
Bは、ピュタゴラスの主張であるので間違い。
Cは、エンペドクレスの主張であるので間違い。(5/5)



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倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(3)



(今回も「青年期の課題」についての問題にトライします)

問 防衛機制の説明として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 熟れたあまいブドウを取れなかったキツネが、「あれはすっぱいブドウだ」と負けおしみを言って立ち去った例にみられる。これが合理化の機制といわれる。
A 失恋の経験を小説や詩として結晶させたり、性的エネルギーをスポーツクラブ活動に転換するなど、社会的に認められるより価値の高いものに向けて解消する。これが反動形成の機制といわれる。
B 赤ん坊が生まれ、親の愛情が赤ん坊に移ったものと考えて、赤ん坊と同じような行動をとることによって親の愛情を得ようとする例にみられる。これが投射の機制といわれる。
C けちな性格の自分を、友だちからけちだと言われたくないために、友だちをけちだと言って、自分がもっている嫌な欠点や欲求を他人に移しかえる例にみられる。これが代償の機制といわれる。
(2007年 駿台模試)





   正解は@です。

青年心理の問題の中で最も出題頻度の高いのは、この防衛機制である。定義を理解するのは当然必要であるが、具体例を示されても、どれがどれにあてはまるのかを答えられるようにしておく必要がある。

@は、正しい。防衛機制の中では代表的なものである
Aは、置き換えの一つの昇華についての説明であるので間違い。
Bは、退行の説明であるので間違い。
Cは、投射の説明であるので間違い。(4/29)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(2)



(今回も「青年期の課題」についての問題にトライします)

問 青年期の自己発見に関する記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 自分が何者であるのかわからないという「アイデンティティの危機」は、自我を確立すべき青年期に特有の現象であり、他の時期には見られない。
A 「第二次性徴」という身体的特徴が現れる時期になると、セルフ・イメージの形成がそれまで以上にセクシュアリティと密接に関係するようになる。
B 実社会に参加して社会人としての義務や責任を負うことを心理的・社会的に猶予される「モラトリアム」は、人類の歴史上普遍的な現象である。
C 「イニシエーション(通過儀礼)」を経て集団の成員となることは、一種のマインド・コントロールを受けることであり、自己発見とは相いれない。
(2000年 センター試験)




   正解はAです。

 各々の選択肢をしっかりと読んで、早合点しないようにすることが大事である。確実に間違いと言えないならその選択肢は最後まで可能性として残し、最後に残ったものを再度検討し直して、より適当と思われるものを選ぶことが正解を導くコツである。

@について、前半は正しい。エリクソンは「アイデンティティの確立」は青年期の課題であるとしたが、それに対する失敗はいつの時期においても見られる可能性があることは、じっくり考えてみれば分かるはずである。この選択肢は間違い。
Aについて、「セルフ・イメージ」「セクシュアリティ」などの言葉が意味しているものが想像できれば、これは正しいということがわかる。
Bについて、マーガレット=ミードは青年期の存在そのものが人類の歴史上普遍的な現象ではないと、サモアの調査で分かったとしているのでこれは間違い。
Cについて、「イニシエーション(通過儀礼)」は一種のマインド・コントロールと言えなくもないが、当然それが自己の自覚を発生させる起因となったり、深めることにつながり、 自己発見を促すものともなるはずであるので間違い。(4/24)



倫政センター試験・模試の過去問をやってみよう(1)



(今回は「青年期の課題」についての問題にトライします)

問 人間を「理性的動物」とする定義を再検討した思想家にカッシーラーがいる。カッシーラーによる人間の定義に関する記述として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。

@ 組織を形成して他人と共存し、集団生活を営む社会的な存在。
A 自然に働きかけて物を作り、環境を変えていく実践的な存在。
B シンボルを介して世界を理解し、芸術や宗教を作り出す存在。
C 競争と表現を楽しみながら、遊びの中で文化を創造する存在。
(2004年 センター試験)




   正解はBです。

  人間の特性については、誰が何と言ったかを機械的に覚えるだけではなく、それは人間のどういう特性について述べたものかなどのその言葉の意味を理解しておかねばならない。

@は、アリストテレスの「ポリス的動物」の説明であるので間違い。
Aは、ベルクソンの「ホモ−ファーベル」の説明であるので間違い。
Bは、カッシーラの「アニマル−シンボリクム」の説明であるので正しい。
Cは、ホイジンガの「ホモ−ルーデンス」の説明であるので間違い。(30 4/20)



<倫理の学習に取り組むにあたって>

 国公立大学の文系学部を第一志望とする場合、基本的にセンター試験において地歴公民から2科目受験しなければならない。東大などの超難関校をめざす場合は、二次試験などの関係でその2科目が世界史と日本史でなければならない場合もあるが、そうでない場合は地歴から1科目、公民から1科目受験するのがベターな組み合わせではないかと考える。
 地歴の特に日本史・世界史は二次試験の対象科目ともなる場合があるので、センター試験だけに照準を合わせることはできないが、公民科目の場合は二次試験の対象とはならないのでセンター試験だけに的を絞った勉強を行えばよい。
 しかし、公民科目の倫理(本校では倫政を受験する)は歴史科目よりも暗記量が少なく、簡単に高得点が取りやすいと思いがちだか、決して簡単に高得点を取れる科目ではない。ただ暗記をすればいいかと思っているかもしれないが、思想の内容が理解できなかったり考え方がつかめなければ手も足もでない厄介な科目である。単に知識のインプットだけではどうにも対処できない。また、センター倫理では問題文・リード文の読解力や思考力やデータの読み取り能力も試される。
 今回は、そんなセンター倫理で高得点を取るための勉強法と対策を、センター試験本番の倫政で94点をとった受験生(本校の生徒ではない)の報告を参考にして紹介していく。

 @ センター試験の過去問をやっていけば分かるのだが、暗記だけでは高得点を取れな い。問題文・リード文の読解力や思考力が求められる。国語力をみがくことが大切だ。常日頃の学習でこのことを念頭におくことが大事だ。
 A “なあなあ”な暗記をしないこと。浅い暗記しかしていないために、選択肢の文章 に惑わされ、間違った文章を選んでしまう。たとえば、「この思想家といえばこの言葉だ」と安易に判断したばかりに、言葉は正しくても、文章全体としては間違ったことが述べられているのに、正しいものとして決めつけてしまうというパターンは多くある。浅く中途半端な知識だけを頭に入れていては、問題の正誤を正しく判断することはできない。徹底的な思想の理解が求められる。
 B 教科書をこまめに復習する。ともかく教科書を覚えるぐらいに徹底的に読むことが 大事。センター試験は、教科書を逸脱しない範囲から問題が出題される。つまり、教科書を覚えてしまえば完璧ということだ。音読をして覚えるのが個人的にはおすすめ。声に出して読むとそれだけ頭に入る。(4/14)(以上)

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